北斗星(4月14日付)

お気に入りに登録

 「マスク」という題の小説がある。主人公は太っていて人から丈夫だと思われている。実際は内臓が弱いらしい。坂を上れば息切れし、深呼吸も十分にできない。医者に診てもらったら心臓の病という

▼菊池寛の短編だ。約100年前流行したスペイン風邪にまつわる経験を題材とする。「四十度位の熱が三、四日も続けばもう助かりっこはありませんね」と医者。おびえる主人公は外出を控え、うがいとマスク着用が欠かせなくなる

▼その姿は新型コロナウイルスの感染が拡大する現代と重なる。「最善の努力を払って、罹(かか)らないように、しようと思った」。主人公の言葉は今の時代を生きる人々の気持ちと驚くほど似てはいないだろうか

▼菊池の時代に比べ、医療は大きく進歩した。コロナ対策の切り札とされるワクチンもできた。医療従事者に続き、高齢者への接種が開始。県内ではきょうの秋田市を皮切りに各地で順次実施される

▼感染の不安から早く解放されたい―そんな思いから人々の期待は大きいだろう。問題は混乱なく確実にみんなへ行き渡るかどうか。感染力の強い変異株が出現して「第4波」がうねり始める中、スピードが大切になる。海外からのワクチン供給について担当大臣は「どんどん来る」と自信満々だ

▼安倍前政権の対策を官邸中枢の一人が総括した。「泥縄だったけど、結果オーライだった」。その泥縄が今も続いていなければいいのだが。結果オーライがそう何度もあるとは思えない。

秋田の最新ニュース