北斗星(4月15日付)

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 今年は里山の雪解けも駆け足で進んでいるようだ。店頭にはタラノメやコシアブラが並び、にかほ市南部では気の早いワラビまで顔を出しているらしい

▼ワラビの根から採ったでんぷんを固めて作る根花(ねばな)餅はかつて県内各地で見られたが、その後廃れた。それが10年ほど前、由利本荘市の三ツ方森集落で復活を果たした。昔ながらの味を惜しんだ住民の熱意があってのことだ

▼今では知る人も少なくなったが、県内で最も有名な産地の一つは現在の大仙市協和にある船沢集落だった。土壌が適しているのか、昔から上等なワラビが育った

▼藩政時代は茶店が並び、秋田藩主も参勤交代で立ち寄って根花餅を食べた。現在、集落で作っている家庭はないようだ。住民によると、根を掘って水洗いし、何度もたたいてほぐすなど手間がかかるため、作る人がいなくなった

▼以前作り方を聞いたことがある由利本荘市矢島町の「松皮餅」も食べられるようにするまでが大変だった。アカマツの白皮を剥いでから数時間煮た後でたたいて細かくする。根気がないとできない作業だ。藩政期に頻発した飢饉(ききん)を背景に生まれたとされるこうした食が今も県内には伝わる

▼県教育庁は今年から、伝統的な食の文化財としての価値を再評価する調査に取り組む。人々は飢えに耐えながら根を掘り、皮を剥いで命をつないできた。苦難の歴史が刻み込まれた食の記憶を失うわけにはいかない。それにつけても船沢の根花餅を食べてみたかった。

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