社説:こども庁検討 組織より政策を論じよ

お気に入りに登録

 「こども庁」創設に菅義偉首相が意欲を示し、政府、自民党内で検討が進められている。子ども関連政策の司令塔として府省庁の縦割りを打破し、深刻化する少子化の克服につなげる構想という。

 少子化に歯止めをかける取り組みを強化すること自体は歓迎される。だが組織再編の議論が先行して、具体的な政策が見えてこないのが気掛かりだ。組織を論じる前に、何が少子化の原因であり、その克服のためにどんな政策が必要なのかをきちんと議論するべきだ。

 こども庁創設は自民党国会議員有志が提言した。秋までに行われる衆院選の目玉公約にする狙いがある。

 現時点で三つの政府案がある。その一つは、こども庁を内閣府に設置し、就学前の子ども関連政策を担うだけでなく、現在は文部科学省が所管する小中学校の義務教育を移管する内容。文科省の根幹に関わる大改革となるだろう。

 就学前から義務教育段階までの施策を一貫して一体的に推進する狙いがあるという。しかし、中学までと高校以降で所管省庁が異なるようになれば、新たな縦割りの弊害が生じないだろうか。懸念を払拭(ふっしょく)する組織像を示してほしい。

 他の2案は、義務教育を文科省の所管にしたまま▽幼稚園、保育所、認定こども園の所管をこども庁に一元化する▽内閣官房に「こども政策戦略会議(仮称)」を新設し、その下に担当室を設置する―との内容。3案ともに児童虐待や貧困の問題も新組織が受け持つとしている。

 現在は文科省が幼稚園と小中学校、厚生労働省が保育所や障害児施策、児童虐待防止などを担当する。幼稚園と保育所を巡る縦割りを打破し、待機児童を解消することなどを目指して2006年に導入された認定こども園は内閣府が所管している。

 結局、未就学児が通う施設は幼稚園、保育所、こども園の3種となり、担当も3府省に増えた。こうしたこともあり、子どもに関する行政の仕組みが複雑で国民に分かりづらいと指摘される。その反省を生かしたい。

 安倍前政権は、希望しても認可保育所や認定こども園に入れない待機児童を20年度末までにゼロにする目標を掲げた。前政権を継承する菅首相は目標達成は厳しいとして、21年度から4年間で14万人分の保育施設を整備する方針だ。

 施設整備を進めても、子育て世代の女性の就業率は上昇を続けており、一層の施設整備が必要になる可能性がある。待機児童問題一つを取っても、簡単に解決できる問題ではない。

 働く人の4割が低賃金で不安定な非正規雇用の時代。働きながら産み、育てるのが困難な状況がある。社会全般に山積する問題を一つ一つ確実に解決していくことが求められる。その議論の積み重ねの先に、あるべき組織の姿が見えてくるはずだ。

秋田の最新ニュース