社説:県のフレイル予防 口の機能強化が第一歩

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 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、高齢者の身体機能や認知機能が低下して要介護一歩手前の「フレイル(虚弱)」に陥ることが懸念されている。全国で最も高齢者の割合が高い本県は特に注意が必要だ。食べ物をよくかみ、のみ込む機能を高めることがフレイル予防に効果的として、県は本年度から本格的に口の機能強化に取り組むことにしている。

 フレイルは日本老年医学会が2014年に提唱した。18年の県調査では、この言葉について8割近くが「全く知らない」と回答。県は啓発活動に一層力を入れなければならない。

 厚生労働省はフレイルの実態を把握するため、20年度から全国の75歳以上を対象に段階的に健診を進めている。質問票は「この1年間に転んだことはあるか」「週1回以上外出しているか」「お茶や汁物でむせることがあるか」など15項目からなる。これに基づき「健康寿命」を延ばすための介護予防の取り組み強化を図る。社会保障費の抑制につなげることが狙いだ。

 欧州などではコロナ感染拡大防止のため、日本より厳しい外出規制を課し、高齢者が自宅にこもりきりになる事例が増加している。英大学の研究チームが12カ国でコロナ患者約5700人を調査したところ、深刻なフレイル状態の患者はそうでない患者に比べ、死亡率が3倍高かったと発表した。この結果を重く受け止めたい。

 本県の65歳以上の高齢化率は37・9%と全国で最も高い。県は健康寿命を延ばすため、「健康秋田いきいきアクションプラン」を策定し対策に取り組んでいるが、フレイル予防については十分とはいえなかった。

 県は「歯と口腔(こうくう)の健康づくり推進条例」を一部改正し、心身の機能低下をもたらす恐れがある「オーラルフレイル」(口の虚弱)の項目を追加。4月に施行した。

 歯の本数を保つだけでなく、口腔全体の機能を高めることで健康寿命を延ばす方針。本年度から実態調査を行う。現状を詳細に分析し、具体的な対策を示してほしい。

 厚労省と県が16年に行った歯科疾患調査によると、40代の歯の本数は全国、本県ともに27・8本だが、50代では全国の25・85本に対し、本県は22・3本。60代以降も本県が全国を下回る傾向は変わらない。

 厚労省はフレイル予防のポイントとして十分な栄養補給、運動、社会参加の三つを挙げている。口内が健康でなければ食事が進まず、きちんと栄養を取れなくなって次第に体力が落ちる。会話がおっくうになり、社会参加もできなくなる。高齢者の家族や周囲はわずかな兆候も見逃さないよう心掛けたい。

 フレイルは生活習慣と密接に関わるため、長期的な対策が必要だ。県は国のフレイル対策と連動し、市町村とも連携して予防に取り組んでほしい。

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