社説:学術会議新声明 政府は欠員の解消急げ

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 日本学術会議の会員候補の任命を菅義偉首相が拒否した問題は、いまだ決着からはほど遠い。会議は、拒否された候補6人を「即時に任命するよう要求する」とする声明をあらためてまとめた。拒否された学者たちは、理由を明らかにするよう内閣府に情報開示請求した。

 菅首相をはじめ政府側は昨年10月に問題が表面化して以降、拒否理由の説明に応じず、任命手続きは終了したと主張している。しかし明確な説明がないままでは、恣意(しい)的な人事ではないかとの疑いが拭えない。直ちに情報を開示することが求められる。正当な理由を示すことができない限り、早急に6人を任命するべきだ。

 学術会議は内閣府に置かれた特別の機関。政府から独立して活動し、政府の諮問を受け答申するほか、独自の提言も行う。

 日本学術会議法は、会員について会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命するとしている。学術会議の独立性を守るための規定であり、菅首相以前の歴代首相は推薦された候補の任命を拒否したことはなかったとされる。

 会議の定員は210人。任期は6年で、3年ごとに半数の105人を任命する。定員が法で定められている以上、欠員が生じれば新たな会員を任命するのが政府の責務だ。半年余り欠員を放置しているのは無責任と言わざるを得ない。

 情報開示請求は、杉田和博官房副長官らが任命について内部で協議した際の文書が対象。任命拒否された本人が自らの情報を請求する「自己情報開示請求」だ。政府が個人情報であることを理由に開示を拒むのを防ぐ狙いがある。本人にも説明できないようなら任命拒否の正当性は信じることができなくなる。

 請求後、記者会見した学者たちは任命拒否について「会議の独立性を踏みにじる」などと厳しく指弾。不開示などの際には訴訟も視野に入れるとした。

 6人は過去に安全保障関連法などを巡り、政府方針を批判した経緯がある。このままでは、政府に批判的な学者を排除したとみられても仕方がない。批判的な意見も尊重し、政策に反映するのが民主主義だろう。

 識者からは学術職・学術機関の自律を保障する憲法23条の「学問の自由」に違反するとの批判が上がっている。政府は謙虚に耳を傾けるべきだ。

 学術会議は、政府が求める組織の在り方の見直しについても報告書をまとめた。今の組織形態は役割を果たすのにふさわしいとした上、形態を変更する積極的理由は見いだせないとした。これに対し、会議の独立行政法人化などを検討する自民党プロジェクトチームは見直しに消極的だなどと批判している。

 しかし、任命拒否との関連で何が問題なのかを明確に指摘せずに改革を迫るのは、議論として無理がある。まず任命拒否問題の解決を急ぐのが順番だ。

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