北斗星(4月27日付)

お気に入りに登録

 秋田市の雄物川の堤防を歩くと四季折々の草花の変化に出会えるのが楽しみだ。今の時期なら爽やな川風を受けながら、赤紫色のヒメオドリコソウの群落に交じって鮮やかな黄色のタンポポや菜の花が咲き誇る姿に出会う。変わらぬ春の光景である

▼与謝蕪村の長詩「春風馬堤曲」と二重写しになるようにも思える。都会に奉公に出ていた少女が休暇をもらって帰省する。歩きながら、古里で帰りを待つ母に寄せる思慕が全編にあふれている

▼白と黄のタンポポが三々五々咲いている堤の道を行く。〈春風や堤長うして家遠し〉。母のいる実家までとても遠く感じられるという感覚は、古里に向かう人が誰しも抱いたことのある切ない思いだろう

▼今年の大型連休は、この少女と同じく古里への道を遠く感じた人が多いのではないか。新型コロナウイルスの感染再拡大は一向に歯止めがかからず、4都府県に3度目の緊急事態宣言が発令された。連休中の人の流れを止めるため不要不急の外出や帰省を控えるよう訴えている

▼多くの家族が昨年の大型連休だけでなく、お盆、正月の帰省を断念したに違いない。それだけに今年の連休の帰省を心待ちにしてきた家族も多いはずだ。それも今回はかなわないか

▼県内でも高齢者を対象にワクチン集団接種が始まった。まだペースが遅く、心置きなく再会を喜び合える日がいつかは見通せない。帰省を待ちわびる家族にとって、春爛漫(らんまん)の古里への道はまだ遠くにかすんだままだ。

秋田の最新ニュース