北斗星(4月29日付)

お気に入りに登録

 観光地で頼りになるのがガイドブック。新型コロナウイルスは収束せず、県外との往来はままならない。せめて旅先での街歩きの気分だけでも―。そう思って取り寄せた一冊が「仙台本屋時間」(ビブランタン)

▼仙台市のまちなかにある本屋24店を紹介する。老舗から大型総合書店まで個性派ぞろい。3人の店主が担当エリアを案内する形で構成されている。読み進めるうちに一緒に散策している気分になれる

▼装丁は糸とじ。カラー地図の付録もありがたい。仙台ゆかりの5人がエッセーを寄せている。東日本大震災後、神奈川県鎌倉市から福島県南相馬市に移住した作家の柳美里さんにとって本屋は、物心ついた頃から現在まで「この世の中でいちばん好きな場所」。転居先で自ら本屋を開いた理由と覚悟を語る言葉が胸に迫る

▼街の本屋はネット書店に押されがちだが、知らない本に偶然出合える魅力は捨て難い。ガイド役の一人で、この本を企画した前野久美子さん(52)は「観光どころではない今、地元の人が仙台の街を楽しめる本にしたかった」と話す

▼1年前の緊急事態宣言の際は休業要請に従い3週間店を閉めた。その前日、普段は寡黙な常連の高齢男性が会計の後、「閉められたら困るんだよ」と大きな声を上げて店を後にした

▼それだけ愛されている証しだろう。カフェ併設の前野さんの古本屋の名は「火星の庭」。新型コロナ収束を待ち、杜(もり)の都を象徴する並木道・定禅寺通り沿いの店を訪ねたい。

秋田の最新ニュース