北斗星(5月3日付)

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 オレンジ色の小さな四角、それが絵本の主人公だ。みんなは大きくて、いろんなことができる。僕は取るに足らない。きっと誰かの「部分品(部品)」なんだろう。そう思って確かめに出掛ける

▼題名は主人公の名前と同じ「ペツェッティーノ」(レオ・レオニ作、谷川俊太郎訳)。相手に次々と質問を浴びせる。でも一向に答えが見つからない。やっと分かったのは自分も部品の集まりでできているということだった

▼「ぼくは ぼくなんだ!」。大喜びで叫ぶペツェッティーノ。その言葉に作者の思いが詰め込まれている。自分はかけがえのない存在―と気付くことができてよかったね。読み終わって思わず、そう声を掛けたくなった

▼この話から憲法の根っこを感じることができるという。関係する条文は「すべて国民は、個人として尊重される」で始まる13条。一人一人を大切な存在とし、幸福を追求する権利をうたう。堅苦しい題材が柔らかな物語を通じてぐんと身近になる

▼「絵本で感じる憲法」(山崎翠(みどり)著)には、そんな作品がたくさん出てくる。現憲法が施行されて今日で74年。大型連休中、優しい言葉と絵でつむがれた一冊に触れながら、この法に込められた深い思想を感じ取るのもいい

▼新型コロナウイルスの感染再拡大で自由に出歩くのもままならない。人の触れ合いも制約される。そんな日常の中、個人は十分に尊重されているのか。憲法を考えることは暮らしの足元を見詰め直すことでもある。

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