社説:無電柱化推進 防災の観点から急務だ

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 国土交通省は、2021年度から25年度まで5年間にわたる無電柱化推進計画案をまとめた。災害に強い「脱・電柱社会」を目指して今月、正式決定する見込みだ。

 電柱撤去の必要性は以前から指摘されているものの、遅々として進んでいない。国内全体で1%程度にとどまっているのが現状だ。防災や景観向上の意義を踏まえ、無電柱化を着実に推進しなければならない。

 無電柱化は道路など地上にある電柱を撤去し、電線を地下に埋設する取り組みを指す。電柱は地震や台風で倒壊し、車などの通行を阻害しかねないほか、一帯に張り巡らされる電線と共に景観を損ねると指摘されている。

 計画案によると、この5年間で特に力を入れるのは、災害発生時、救助や生活物資の輸送などに活用される「緊急輸送道路」と、高齢者の通行が多い駅の周辺にバリアフリー法に基づき設置されている「特定道路」だ。緊急輸送道路は市街地の道路上にあるものを対象に無電柱化率52%を目指して事業に着手する。特定道路は38%を目標に掲げる。

 個々の事業のスピードアップも図る。従来は地下埋設の場合、設計から完了まで平均で7年を要していたが、これを4年に短縮する。

 大切なのは、事業を進めるとともに、地下埋設の意義を国民に広くアピールし、脱・電柱社会への機運を高めていくことだ。国、自治体、電気・通信事業者が一体となった取り組みが欠かせない。

 国交省によると、電柱のないまちづくりは世界各国で進んでおり、ロンドンやパリ、香港、シンガポールなどは無電柱化率100%だ。それに比べ、日本は最も普及している東京23区でも8%で、大阪市も6%程度。地方はさらに低く、立ち遅れが際立っている。

 日本は有数の地震国であり、防災への備えを怠ることはできないはずだ。1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災でも数多くの電柱が倒壊して救助や復旧作業の妨げとなり、問題化した。後を絶たない災害の教訓を十分生かしていくことが重要だ。

 無電柱化がなかなか進まない理由に、地下埋設は地上に電柱を設置する場合よりも費用が大幅にかかり増しになることが挙げられる。そのため、宅地開発などに伴い新たに電線網を整備する際、従来通りの電柱設置方式が繰り返し選択されてきた。電柱は一部で撤去される一方、新設される例が相次ぎ、本数は全体としてむしろ増えているのが実態だ。

 だからこそ国が財政面の支援を強化するなど、責任を持って無電柱化を進める必要がある。地下埋設の手法を工夫し、コスト縮減にも力を注ぐべきだ。脱・電柱社会を掛け声倒れに終わらせてはならない。

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