社説:県内文化財の保存 担い手育成へ知恵絞れ

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 県教育委員会は、文化財の保存と活用の基本方針となる「県文化財保存活用大綱」を策定した。人口減や少子高齢化に伴い、担い手不足が喫緊の課題になっている。次世代へ継承するには担い手育成に知恵を絞るとともに、観光資源として活用する新たな発想も求められる。

 大綱は、2019年4月施行の改正文化財保護法により、都道府県ごとに定められるようになった。文化財は人々の生活や風土との密接な関わりの中で生み出され、現在まで伝えられてきた住民共通の財産である。大綱策定が文化財に対する県民意識を高めるきっかけとなることを期待したい。

 本県には「秋田竿燈まつり」(秋田市)や「西馬音内盆踊り」(羽後町)など国の重要無形民俗文化財が全国最多の17件ある。また、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産「白神山地」や世界文化遺産登録を目指す縄文遺跡群、「男鹿のナマハゲ」を含む5件の無形文化遺産など、多彩な文化資源に恵まれている。

 一方、民俗文化財を継承する住民の高齢化や後継者不足は深刻だ。建築物などの文化財の維持管理には国や自治体の補助もあるが、十分ではない。

 こうした現状を踏まえ、大綱は、地域一体となって保存と活用の相乗効果を生み出す視点が必要だと指摘している。観光振興に生かして収益を上げ、保存に役立てるという考え方だ。

 最優先に挙げられる課題は、民俗芸能や祭りの担い手確保である。児童生徒を後継者として育成していくことが重要だ。

 本県はふるさと教育の中で、子どもたちに文化財の重要性を伝えてきた。しかし指導する教員が地域の文化財に詳しいとは限らない。地域との連携を一層進めるべきだ。

 少子化が進行する中、担い手確保は容易ではない。そこで必要とされるのは、観光に訪れる「交流人口」だけではなく、祭りや行事の準備段階から継続的に関わる「関係人口」を創出することだ。こうした人たちは将来の担い手となる可能性もある。伝統にこだわらず、柔軟に受け入れる態勢を整えたい。

 文化財を観光やまちづくりに生かすためには、所有者や住民の協力が欠かせない。文化財が観光資源としてどんな可能性を持つかを十分検討しながら、丁寧に共通理解を深めていくべきだろう。

 文化財の価値や魅力を伝える情報発信も不可欠だ。案内板の解説を多言語表記にしたり、QRコードなどを利用してスマートフォンで簡単に読み込めるようにするなどデジタルツールの積極活用も進めたい。

 県内には独自の食文化など、生活に密着した文化財候補がまだ数多く埋もれているとみられる。実態を計画的に調査することも必要だ。文化財の保存活用を通し、住民が地域の魅力を再発見する機会にしたい。

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