社説:国民投票法改正へ まず合意事項の実行を

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 憲法改正手続きに関する国民投票法改正案が6月に成立する見通しとなった。政党のスポットCMやインターネット広告の規制を巡る立憲民主党の修正要求を自民党が全面的に受け入れ。改正案は衆院憲法審査会で可決された。きょう衆院を通過する予定だ。

 改正案には、施行後3年をめどにCM規制などを検討し、必要な措置を講じるとの付則が設けられた。改正案が成立しても、すぐに国民投票を行えるほど改憲論議が深まっているわけではない。まず合意した付則を着実に実行することが重要だ。

 国民投票法は2007年に成立し、10年に施行された。改正案は国政選挙と同様の投票環境を整備し、有権者の利便性を高める目的で18年6月、自民、公明、日本維新の会などが提出。自民には本格的な改憲論議につなげる思惑があった。

 一方、立民は安倍前政権下での改憲に反対。今国会でも改正案採決には慎重姿勢だった。しかし与党が秋にも迫る衆院解散で廃案になるのを避けるためもあって修正を受け入れたため、成立の運びとなった。具体的な規制内容を巡っては与野党間の隔たりは依然大きく、改憲論議の行方は見通せないが、合意は尊重されるべきだ。

 国民投票法改正案の主な内容は、駅や商業施設でも投票できる「共通投票所」の設置や期日前投票時間の弾力化など、投票に関する規定を公職選挙法とそろえるもので、7項目で構成。それ自体は投票の利便性を高める内容であり、理解できる。

 ただし現行法は、投票を呼び掛けるCMを投票日の14日前から制限。それ以前は自由だ。ネット広告に関する規定はない。このため立民は政党の資金力が投票結果を左右するとして問題視。公平性を担保することを目的として規制を求めてきた。

 確かに、資金量の豊富な政党などが大量のCMを流せば、投票行動に影響を与える可能性は否定できないだろう。一方、表現の自由を守るために、規制が行き過ぎないよう十分な配慮が必要だ。

 ネット広告について言えば近年、事実と異なる情報を流して投票行動を誘導する手法が米大統領選などで問題になってきた。国民投票でそうした問題が起きないよう、ネット利用の在り方についても十分検討しなければならない。与野党が今後、真摯(しんし)に議論を深めることを期待したい。

 他にも課題は残る。中でも重要なのは、国民投票が成立する「最低投票率」を定める制度導入の是非だ。07年の法制定時の付帯決議では検討するとされたが、議論の進展はない。

 極端に低い投票率の下で行われた国民投票で憲法改正の是非が決まるのは適当でないとの指摘がある。憲法の正統性にも関わり得る論点を置き去りにした今回の法改正には疑問も残る。さらなる議論を求めたい。