北斗星(5月12日付)

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 10年ほど前、許可を得て世界自然遺産・白神山地の本県側の核心地域に入ったことがある。原則入山禁止で道がなく、獣道を通って藤里町の粕毛川源流部に向かった

▼どこまでも続くブナとササが織り成す森林の美しさは忘れ難い。意外に幹回りの細い木が多く、樹齢を重ねた太い木は限られていたことを思い出す

▼太くて真っすぐなブナにしか巣を作らない本州のクマゲラの目撃情報が途絶えて久しい。研究者が昨年複数回行った調査でも、とうとう見つけることができなかった。生息をうかがわせる痕跡すらなかったというから深刻だ

▼最後に目撃されたのは白神山地の核心地域では2014年10月、森吉山のノロ川流域では17年4月だ。一方は世界遺産、他方は国設鳥獣保護区である。豊かな自然が守られ、生息に最適なはずだが、何が起こっているのか。増え続ける入山者を警戒して巣を放棄したことなどが影響しているとの指摘があるようだ

▼長い間、本州にはいないとされていたクマゲラを地元山岳会メンバーが目撃したのが1970年。これを機に調査が本格化し、78年に繁殖が確認された。研究者の執念である。それから40年余りで絶滅したとしたら無念の極みだ

▼道なき深山では見つけるのが困難なだけではないかと、一縷(いちる)の望みを託している。クマゲラにしてみれば、単にそっとしておいてもらいたいだけかもしれない。姿を現さなくとも、せめて生存の痕跡だけでも残してくれればと願うしかない。

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