社説:高齢者ワクチン 着実かつ迅速な接種を

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 新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種が全国で本格化しつつある。国のワクチン供給の見通しが立ち、実施地域が都市部から地方に拡大される。ただ全国的に感染拡大が続いており、自治体は接種に携わる医療従事者の確保に不安を抱える。計画通り進められるかどうかは予断を許さない。

 昨日は4都府県で発令中の緊急事態宣言が延長され、愛知、福岡2県が追加された。比較的感染者が少なかった本県でもクラスター(感染者集団)の続発で感染者が急増している。

 そうした不安も反映してか、自治体への接種予約が殺到。各地で電話やネット回線がつながらない事態が起きている。接種の「入り口」でつまずいているのでは何とも心もとない。

 国際的なワクチンの争奪戦に出遅れ、接種スケジュールは大きくずれ込んだ。接種対象の65歳以上の高齢者は約3600万人。6日時点の政府集計で1回目の接種を終えたのは約24万人にすぎない。高齢者に先行して始まった医療従事者向け接種もいまだ終了しておらず、今後並行して進められる。

 菅義偉首相は高齢者へのワクチン接種を7月末に完了するとし、1日100万回実施する方針を表明している。これまでの遅れを取り戻そうという狙いだろう。首相発言を受けて、政府は6月末までに全高齢者分の接種を賄うとして、市区町村ごとの配送量を各都道府県へ先月末に通知している。

 全国知事会の調査では政府目標について全都道府県が「医療従事者の不足」を課題に挙げている。この点が気掛かりだ。

 国は資格を持ちながら離職している「潜在看護師」の掘り起こしのほか、従来は禁止されていた看護師派遣を来年2月までの特例として認める措置などで対応しようとしている。いずれも自治体からの要望に応えた。ただこうした対策で人材を確保できるかどうかは不透明だ。

 今月下旬、国による大規模接種会場が東京、大阪で稼働する。同様の会場を独自に設置する自治体もある。しかし高齢者が感染拡大の続く都市部で長距離移動したり、集まったりすることのリスクは大きい。十分な対策が求められる。

 集団接種だけで全ての高齢者をカバーするのは難しい。かかりつけ医での個別接種を望む高齢者も少なくない。在宅介護の高齢者には訪問接種が必要だ。高齢者それぞれの事情を酌んだ接種の在り方を検討したい。

 首相が口にした政府目標は重いが、「公約実現」のために接種を担う自治体や医療従事者に無理を生じさせてはならない。十分な感染対策や副反応への対策こそ重視すべきだ。

 感染による重症化リスクが高い高齢者を守るため、迅速な接種が求められる。そのため国はワクチンを計画通りに届け、自治体の安全・着実な接種をしっかり支えなくてはならない。

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