社説:40年超原発再稼働 課題先送りは無責任だ

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 福井県の杉本達治知事が、運転開始から40年を超えた関西電力の美浜原発3号機と高浜原発1、2号機の再稼働に同意すると表明した。これで再稼働への最後の関門だった地元の同意手続きが完了。関電は、美浜3号機を6月下旬に再稼働させると正式発表した。

 しかし老朽化が進む原発の安全性や避難計画の実効性への懸念は解消されていない。多くの課題を先送りしたまま、再稼働を急ぐ国や関電の姿勢は無責任と言わざるを得ない。

 2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年と定められた。ただし例外として1回だけ最長20年間延長できる。今回の原発3基は1974~76年に営業運転を開始。既に原子力規制委員会が延長を認可済みだ。美浜3号機が再稼働すれば、現行ルール初の延長運転が確実になる。

 杉本知事は40年超の原発1カ所当たり最大25億円の交付金を支払うとする国の地域振興策を評価した。一方、他の課題への対応は具体性に乏しいままだ。

 福井県は廃炉決定済みも含め原発15基が集中立地する。福島では複数の原子炉が同時に事故を起こし被害が拡大した。同様の事態を繰り返さないために万全な対策が不可欠だ。

 原発は老朽化しても原子炉圧力容器を交換できない。圧力容器は放射線の影響で劣化している恐れがある。設計自体の古さが問題につながる可能性も指摘される。こうした根本的な不安に国、関電はどう応えるのか。

 重大事故が発生した場合、被害が及ぶ範囲は極めて広い。美浜3号機の住民避難計画は原発から30キロ圏内の福井、岐阜、滋賀3県の約28万人が対象。県境を超えた避難訓練は容易ではない。国の責任で計画の実効性を担保する必要がある。

 関電は福井県が求めた使用済み核燃料の県外搬出について、青森県むつ市の中間貯蔵施設を選択肢の一つとし、2023年末までに確定するとした。電気事業連合会も電力各社の共同利用を検討する方針を示した。

 むつ市の施設は東電と日本原子力発電の2社の使用済み核燃料を一時保管するもの。関電などの方針に、むつ市長が「むつは核のごみ捨て場ではない」などと猛反発したのは当然だ。

 原発再稼働の背景には、菅義偉首相が50年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする方針を示したことがある。産業界などには、風力発電などの再生可能エネルギーだけでは目標を達成できないとして、原発推進を目指す動きがある。

 エネルギー基本計画の見直しを進めている国は、30年度の電源構成の原発比率を現行計画の20~22%と同水準に据え置く方針だが、19年度実績は6・2%。脱原発の世論は根強く、原発で温暖化ガスを削減するのは無理がある。エネルギー政策を抜本的に見直し、再生エネの導入をより積極的に進めるべきだ。