社説:大規模接種実施へ 地方の困難にも対応を

お気に入りに登録

 一日も早く新型コロナウイルスワクチンを打ちたい―。高齢者の切実な思いの表れだろう。東京、大阪の大規模接種センターの予約受け付けは東京で初日に予定件数の8割を超え、大阪は30分足らずで全て埋まった。

 いずれも予約はインターネットか通信アプリLINE(ライン)に限定。電話予約はできない。全国の市区町村で予約電話が殺到し、つながらない事態になった反省を踏まえたという。

 ネットを使いこなせない高齢者にとって今回の予約方法はハードルが高い。身近に支援してくれる人がいなければ予約は困難だ。希望者が支援を得られるような仕組みが望ましい。

 先着順ではネットでも予約が殺到するのは当然だ。一定ルールでの優先順位付け、抽選などの方法もある。市区町村の教訓を生かし、もっと公平な予約方法を探る必要があった。

 大規模接種センターは菅義偉首相の指示で4月末に設置が急浮上。防衛省が準備を進め、今月24日に開設する。東京会場は東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県、大阪会場は大阪、京都、兵庫の3府県の高齢者が対象。それぞれ1日1万人と5千人の接種を目指す。当面は対象地域を限定、人数も一定数に絞る。

 梅雨や台風シーズンと重なる8月までの3カ月間の開設。自衛隊が災害派遣される可能性が高い時期だ。被災地支援に支障が生じる不安もある。

 菅首相は「7月末まで全国の高齢者3600万人への接種完了」の目標と、「1日100万回接種」の方針を表明。センター開設はこれを後押しする。

 経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国のうち、100人当たりの接種回数は日本が最下位という今月10日時点の調査もある。接種を受けたくても受けられない現状は放置できない。

 遅れが目立つワクチン確保だが、政府は6月末までに全高齢者分を配送することを都道府県に通知。しかし7月末の接種完了を困難とする市区町村は少なくない。医療従事者の確保が難しいことなどが主な理由だ。

 全国の市区町村が可能な限り、接種時期の前倒しへ努力することは必要だ。ただし国は一方的に自治体の努力を求めるだけであってはならない。センター設置で大都市圏の接種前倒しを後押しするように、地方が直面する人材不足などの困難にも丁寧に対応してもらいたい。

 センターの予約については、市区町村による接種との二重予約も懸念されている。ワクチンを無駄にしないため、センターの予約状況を市区町村に伝える仕組みづくりを急ぎたい。

 会場までの高齢者の移動リスクや会場での3密回避、暑さ対策…。予約から接種の段階に進めば新たな課題がある。いずれも目標達成を優先して、おろそかにしてはならない高齢者の命に関わる課題だ。あらかじめ問題点を洗い出し、しっかりと検証していくことが肝要だ。

秋田の最新ニュース