社説:河井夫妻買収事件 自民も全容解明に責任

お気に入りに登録

 一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件の公判が結審した。公選法違反の罪に問われた元法相で元衆院議員の河井克行被告(自民離党)に来月18日、判決が言い渡される。

 克行被告は妻の案里元参院議員(同)を当選させるため、地元議員ら100人に約2900万円を配ったとされる。公判途中で無罪主張を一転させ、90人の買収を認めた。

 案里氏は克行被告と共謀し4人に計160万円を渡したとして有罪=懲役1年4月、執行猶予5年=が確定。カネをばらまいて選挙の公正さをゆがめた夫妻の責任は重大だ。

 克行被告は公判で「一刻も早く直接有権者に謝罪したい」と述べた。しかし、事件はまだ全容が解明されていない。法をつかさどる法務省のトップだった者として、国会でも経緯を詳しく説明すべきだ。

 買収の原資は不明なままだ。案里氏の擁立は党本部が主導したとされ、1億5千万円を投入して全面支援した。この巨額資金が事件の引き金になったとの疑念は消えていない。

 党本部の誰が資金提供に関与したのか。党務を仕切る二階俊博幹事長は記者会見で繰り返し関与を否定。担当者と名指しされた当時の選対委員長、甘利明氏も「1ミクロンも関わっていない」と述べた。

 責任の所在をうやむやにして終わらせてはいけない。1億5千万円には政党交付金1億2千万円が含まれるとされる。交付金の元は税金であり、自民は使途を調査し明らかにすべきだ。

 克行被告が昨年6月の逮捕以降、議員活動をしていないにもかかわらず歳費を受け取ってきたことも問題だ。今年4月の議員辞職までに歳費や手当など計約2500万円を受け取ったとされる。

 広島市の市民団体は、当選無効となった案里氏が辞職までの1年半余りに受け取った歳費など約4942万円の返還を請求するよう国に求めて提訴した。現行法では、刑事事件に問われ、有罪が確定した議員の歳費返納を定めた規定はない。返還を可能にする法改正が必要だ。

 「政治とカネ」の問題に有権者の目は厳しい。案里氏の当選無効に伴う4月の参院広島選挙区再選挙で自民候補は敗れた。投票率は過去2番目に低い33・61%。有権者に政治不信が広がったことも影響したのだろう。

 河井夫妻買収事件を端緒に吉川貴盛元農相(自民離党)の収賄事件も発覚。議員辞職により4月に衆院北海道2区補欠選挙も実施されたが、自民は候補者を立てられず不戦敗となった。

 離党や議員辞職で事件を幕引きとすることは許されない。菅義偉首相は克行被告と近い関係だとされ、官房長官時代には案里氏の選挙応援演説に駆け付けた。そうした経緯からも、自民党総裁である菅首相には不正の全容を解明し、再発防止策を講じる責務がある。

秋田の最新ニュース