社説:大館の私有林委託 安心感と経営の両立を

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 大館市は4月、市内2カ所の私有スギ人工林の管理を民間事業者に委託した。国の森林経営管理制度に基づき、市が所有者と事業者を仲介した形だ。期間は約20年。県内初の委託となる。

 整備の手が入らない私有林を適切に管理し、経営を経済ベースに乗せるのが狙い。私有財産の扱いが絡む繊細な案件だけに、市は各所有者の意向を十分確認しながら、今後も慎重に委託を進めてほしい。

 制度は森林経営管理法の施行に伴い2019年度にスタートした。市町村が所有者の意向を確認して経営管理権を設定。所有権はそのままにして事業者に経営管理を委託する。林業経営に適さないと判断した場合は、森林環境譲与税の財源を活用し、市町村が直接管理する。

 大館市内の私有人工林は約1万2千ヘクタール。市は毎年600ヘクタールずつ、20年かけて所有者の意向調査を行う計画だ。地籍調査が終わり境界が明確な地域からスタート。手入れされている私有林を除き、所有者に調査票を送って意向確認を進めている。

 市はこれまでに、延べ57人が所有する私有林43カ所、計約87ヘクタールに経営管理権を設定している(25日現在)。このうち1・18ヘクタールの管理を委託した。約20年間管理し、伐採やその後の植林も含む内容だ。

 ただし、委託できたのは林地までのアクセスが容易な「優良物件」という。管理委託をさらに進めるには作業の効率化を図る必要があり、林地の集積や林道整備などが課題になる。

 所有者が事業者に直接委託するケースもある中、所有者にとってのメリットは自治体が仲介するという安心感にある。所有者サイドに立った丁寧な説明により、安心感と経営・集積を両立させてほしい。

 市によると、これまでの意向調査への回答は598件。市に管理を委ねたいとするのはその6割以上に上る。背景にあるのは所有者の高齢化と後継者難だ。地元を離れた子どもたちが、林の場所さえ分からないといったケースが少なくない。

 人工林が放置されたまま荒廃すれば土砂災害などにつながりかねず、整備は急務だ。それが森林経営として民間の手で進められるのが望ましいのは言うまでもない。

 私有林とはいえ、地域の環境や景観を構成する重要な要素であり、経営と効率のみに偏らないよう配慮が求められる。そうした点も踏まえ、事業者への管理委託を進める必要がある。

 県森林整備課によると、県内で所有者の意向を確認して委託に向けた管理権の設定まで進んでいるのは大館市のほかは、横手市と由利本荘市だけだ。

 大館市の場合、「秋田杉の本場」という意識が事業促進につながっている面があるが、意向調査は林地の現況や将来的な見通しを把握する資料にもなる。各市町村には着実かつ迅速に調査を進めてもらいたい。

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