社説:東北新社接待調査 主張の食い違い解明を

お気に入りに登録

 放送事業会社「東北新社」の幹部による総務省官僚への接待に関して、同社が調査報告書をまとめた。会食件数は2015年以降計54件、相手は同省幹部ら少なくとも13人に上る。費用は会社側が負担していた。

 問題は今年2月の週刊誌報道に端を発する。同省幹部が菅義偉首相の長男正剛氏ら会社側から接待を受けていたと報じ、国会で取り上げられた。後に国家公務員倫理規程違反による大量処分にまで発展した。

 放送・通信行政の許認可権を握る同省の判断が、ゆがめられたことはなかったのか。それが一連の接待問題の核心だ。

 調査では、業務に絡む不当な働き掛けは確認できなかった。同省の判断に会食が影響を与えたか否かは依然不透明だ。

 同省とのメールのやりとりの分析では「冗談を交えるなどかなり打ち解けた関係」が判明した。前統括部長の正剛氏は菅首相が総務相時代の秘書官。それを知る上司は「同席してもらえば会話が盛り上がり、懇親の意義が高まる」と考えていた。

 同省との距離を縮めるのに正剛氏の存在が役に立つ、と認識していたということだろう。会社側は会食の機会を巧みに利用して情報を収集、事業に生かそうとしていたのではないか。

 今回の調査でもう一つ注目されるのは、同社の外資規制違反を巡る認識だ。外資比率が上限を超え、違反状態にある可能性を会社側は17年8月上旬に気付いていた。2週間後に同省を訪れ、違反を前提に「報告・相談を行ったと認定することが合理的」―と報告書は判断した。

 これに対して同省の主張は真っ向から対立している。会社側から報告を受けたとされる同省幹部が国会で「記憶は全くない」と繰り返したからだ。

 一体、どちらの主張が本当なのか。問題は、同省設置の第三者委員会が事実関係をどれくらい解明できるかだ。NTTなどによる総務相ら歴代政務三役との会食も判明しており、接待攻勢による行政への影響などについて調査するという。

 同省はこれとは別に、課長級以上の職員ら約140人を対象に調査を実施。違法接待の有無について6月16日に会期末を迎える今国会に報告する方針だ。東北新社の外資規制違反に関しては第三者委に会期中の結果とりまとめを要請している。

 今後の焦点は、会社側の報告書と同省の主張との食い違いについて、第三者委の調査結果が明確な答えを出すことができるかどうかだ。平行線をたどるのであれば、どちらかが事実をねじ曲げている恐れがある。

 違法接待の事実がさらに明るみに出れば、行政と民間との間に今以上に厳しい一線を引く仕組みを求める声も高まるだろう。同省の調査だけでは真相が明らかにならない可能性もある。国権の最高機関である国会も、あらゆる手を尽くして事実関係を解明すべきだ。

秋田の最新ニュース