社説:LGBT法案 差別の解消へ成立急げ

お気に入りに登録

 同性愛や性同一性障害など性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案について、自民党が今国会への提出見送りを決めた。与野党の実務者が法案修正に合意したが、自民党内の調整の段階で一部保守派の猛反発に遭い、党三役が判断した。差別解消へ向かう社会の流れに逆行すると言わざるを得ない。

 法案を策定した自民特命委員会の委員長である稲田朋美前幹事長代行は、今国会での成立について「まだ諦めていない」と表明。会期末は16日に迫り、残された時間は少ない。自民は見送りの方針を撤回し、法案の提出、成立を図るべきだ。

 LGBTは職場で不当な差別をされたり、学校でいじめに遭ったりする例が後を絶たない。離職や不登校につながることも少なくない。一方、同性カップルを婚姻に相当する関係と公認する制度を導入する自治体は増えている。

 差別解消を目指す超党派議員連盟が設立されたのは2015年3月。立法化へ向け、差別解消は「国や自治体の責務」と明記することを求める野党と、慎重な自民、公明両党の溝が埋まらなかった。野党は差別解消を推進する法案を国会に提出。これに対し、差別解消より理解増進を優先するとして、自民は独自法案の検討を進めてきた。

 議員連盟は今年4月中旬以降、一致点を模索して自民の法案を巡り協議。5月14日、法の目的と基本理念の部分に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されないとの認識の下」という文言を追加する修正で合意した。長い時間をかけてこぎ着けた合意を一方的にほごにするような自民の対応は公党として無責任だ。

 保守派は修正部分に対し「差別の範囲が明確でなく、訴訟が多発する社会になりかねない」と反発した。差別を社会からなくすために理解増進を図るのが法案の趣旨だろう。差別される側が差別撤廃を求めて行動することを問題視するかのような姿勢は理解に苦しむ。

 保守派の簗和生元国土交通政務官は「(LGBTは)生物学上、種の保存に背く」と発言。生物学的に誤りで、明らかな差別発言である。

 議員連盟が今国会での法案成立を目指したのは、東京五輪・パラリンピックを意識してのことだ。五輪憲章は「性的指向による差別」を禁じている。憲章に沿った法案提出の見送りは五輪・パラ開催国にふさわしくないことを自民は考えるべきだ。

 合意された法案は差別禁止の規定や罰則が盛り込まれていないため差別解消に直結しないとして、LGBTの当事者からは批判も上がっている。法案が成立したとしても、さらに議論を深め、見直しを進めていかなければならない。

 それでも差別解消へ向け第一歩を踏み出す意義は小さくない。今国会で法案を成立させることは自民の責任だ。

秋田の最新ニュース