社説:県の観光ビジョン コロナ後にらみ戦略を

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 県は本年度、「県観光振興ビジョン」(仮称)を策定する。対象期間は来年度からの4年間。総合計画とは別に観光分野の個別計画をつくるのは12年ぶりとなる。新型コロナウイルスの感染拡大で旅行の在り方が大きく変化したことなどを踏まえ、新たな施策の方向性を示す。

 コロナ禍の中、県境を越える往来の自粛に伴って県外からの旅行客が大幅に減少。県内の飲食店やホテルなど観光業界は依然として厳しい状況にある。

 その一方では、国内外でワクチン接種が進めば感染が抑制され、観光客が自由に行き来できる環境が戻ってくることが期待される。今から万全の準備を進めることは不可欠だ。

 昨春以降の感染拡大で密閉、密集、密接といった「3密」を避ける観光メニューが求められるようになった。今後は、団体旅行よりも少人数の旅行がさらに浸透し、自然散策など屋外型の体験メニューの必要性も増してくるだろう。

 策定に当たってはまず、コロナ禍がもたらしたニーズの変化を的確に捉えることが大切だ。感染が収束した「コロナ後」には、新しい旅行スタイルが定着する可能性もある。

 県は観光業界の関係者ら委員6人でつくる検討委員会の意見を参考にする方針だ。先日の初会合では「たたき台」を示し、重点施策として▽変化に応じた多様なツーリズムの推進▽新たな旅行スタイルに応じた受け入れ態勢の強化▽デジタル技術を活用したプロモーション展開―などを挙げた。

 密を避け、安心して楽しめる県内旅行を実現するには、観光素材のさらなる掘り起こしが欠かせない。山間部から沿岸部まで幅広いエリアを擁する本県は四季を通じた自然の豊かさが強みだ。登山や渓流歩き、釣りに加え、カヌーや星空観賞、農林漁業の体験、さらには地域ならではの食や酒、温泉など多様な楽しみ方を提案してほしい。

 旅先で休暇を楽しみながらテレワークをする「ワーケーション」の推進にも一層力を入れたい。首都圏などの密集を離れて、地方での観光を体験できる新たな旅と働き方のスタイルだ。

 首都圏の上場企業など約4千社を対象にした県の調査では85社が関心があると回答。こうした需要を取り込み、市町村と連携して効果的なPR手法や受け入れ態勢を構築すべきだ。

 気になるのは「県民による県内観光の推進」という視点がたたき台に見当たらないことだ。コロナ禍で県外からの誘客が厳しさを増す中、県民が宿泊施設などを利用して支えている。「県民が支える県内観光」という流れを今後も継続させる必要があるのではないか。

 県内に住んでいながら、訪れたことのない観光地もあるに違いない。地域の観光資源に多くの県民が興味を持ち、足を運びたくなるような対策も盛り込みたい。