社説:菅氏初の党首討論 国民の納得には程遠い

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 菅義偉首相と野党党首による党首討論が行われた。焦点は新型コロナウイルス感染拡大への対応と、コロナ禍の中で開幕準備が進む東京五輪・パラリンピックの是非だった。討論時間が短いこともあって、議論は消化不良に終わった。

 2019年6月以来約2年ぶりで、菅首相就任後は初めての開催となった。首相は質問に正面から答えず、従来と同じ答弁を繰り返す場面が目立った。国民が納得できる説明からは程遠い。五輪開催時の感染防止対策への理解と協力を得るためには一層の努力が欠かせない。

 菅首相は、諸外国より大幅に遅れて始まったものの、ワクチン接種が加速していることを強調。7月中には高齢者への接種がほぼ終了するとして「医療現場の逼迫(ひっぱく)は大幅に改善される」と述べた。

 注目されるのは10~11月にかけて、希望する全ての国民へのワクチン接種を終えるとした点だ。しかし、見通しの根拠にまでは触れなかった。今後の検証が欠かせない。

 菅首相は、来日する選手へのワクチン接種やマスコミ関係者の行動制限により「安全安心な五輪」が実現可能とした。五輪に伴う移動や外出などで国民を感染拡大の危険にさらしてまで開催する理由を問われた菅首相は、従来通り「国民の命と安全を守るのが私の責務だ。守れなくなったら開かないのは当然だ」と述べた。開催の可否を判断する具体的基準は示さず、議論は深まらなかった。

 五輪と並行してワクチン接種を進めるやり方で、十分に安全を担保できるのだろうか。ワクチン以外にどんな対策を新たに講じるのか。こうした点について、菅首相は踏み込まなかった。国民の不安を解消するためには、より詳細で具体的な説明が必要だ。

 コロナ禍の中での五輪開催の意義については、菅首相は「世界が大きな困難に立ち向かい、乗り越えられたことを世界に発信したい」などと述べた。菅首相は以前にも「人類がウイルスに打ち勝った証し」として五輪開催の意義を強調したことがある。パンデミック(世界的大流行)が続き、国内の感染拡大が懸念されているにもかかわらず、既に困難を乗り越えたかのような発言は空疎に響く。国民の共感を得られるか疑問だ。

 党首討論は本来、国会審議の活性化を図ることなどを目的に導入された。首相答弁は単に野党の質問に応じるだけでなく、国民に政策を訴える機会でもあることを忘れてはならない。

 国会は16日に会期末を迎える。野党側は国会の会期を大幅延長し、補正予算を編成することを要求したが、菅首相は応じなかった。問題が山積し状況が日々変化している中、国会を閉じることは適当ではない。必要な施策や制度、予算について国会が迅速に対応できるよう菅首相は会期延長に応じるべきだ。

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