社説:東京五輪まで40日 「安全な大会」根拠示せ

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 国際オリンピック委員会(IOC)と菅義偉首相は東京五輪・パラリンピック開催へ突き進んでいる。新型コロナウイルスの感染が収まらない中、安全は確保されるのか。国民に具体的に説明する必要がある。

 IOCのバッハ会長は7月23日に開幕予定の五輪は「実施段階に入った」と述べ、開催方針を強調。菅首相は英国で開催中の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、五輪・パラの開催に向けた決意を表明した。首脳声明に日本への支持が盛り込まれる予定で、首相は各国首脳の後ろ盾を得る。

 IOCがコロナ対策として選手や大会関係者の行動規則をまとめた「プレーブック(規則集)」は今週中にも最終版が公表される。監視を厳しくし、違反した場合は罰則を科す方針。開催に向けた感染対策を厳格に行うという意思表示だ。

 国内の感染者数は減少傾向。だが新型コロナ対策の緊急事態宣言を期限の今月20日で解除した場合、高齢者のワクチン接種が7月末で完了しても、東京都で感染が再拡大し、8月には再び宣言が避けられない恐れがあるとの試算を京都大の西浦博教授らのチームがまとめた。

 この試算は五輪・パラ開催による影響は考慮していないため、開催されて人の流れが増えた場合は感染者がさらに増加すると考えられる。このデータを政府、大会組織委員会などはどう受け止めるのか。コロナ禍での開催に国民の不安はさらに大きくなるのではないだろうか。

 大会期間中に予定していたパブリックビューイング(PV)の中止を発表した自治体が複数ある。愛知県は「五輪開催で感染拡大を懸念する声が専門家から出ている」として、県内でのPV開催自粛を要請した。

 ワクチン接種は進んでいる。しかし五輪までに接種を終えるのは一部の人に限られる。菅首相が言う「安心、安全な大会」になる保証はない。政府新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「接種率が上がっても、感染を抑える集団免疫の実現という考え方は早すぎる」と指摘。当面、接種以外にも可能な限り厳重な感染対策が不可欠だ。

 海外の一般観客の受け入れは既に断念を決定している。今月中に国内観客の上限を判断することになっているが、慎重な判断が求められる。無観客の選択も改めて検討していいはずだ。

 五輪開幕まであと40日。菅首相はコロナ禍でも大会が開催できるという根拠をまだ示していない。五輪は200以上の国・地域から選手、関係者が来日する世界最大のスポーツの祭典。感染拡大の懸念は拭えない。

 コロナ禍の中で大会を開催する目的と意義や安心、安全とする科学的根拠は何なのか。政府、IOC、東京都、組織委、国際パラリンピック委員会(IPC)は明確に示すべきだ。国民だけでなく、世界を納得させなければならない。

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