社説:緊急事態解除へ 「第5波」抑止戦略探れ

お気に入りに登録

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて東京など10都道府県に出している緊急事態宣言について、沖縄を除く9都道府県で解除することを決めた。うち7都道府県はまん延防止等重点措置に移行する。

 今後、流行「第5波」が起きて再び宣言が必要になるとの専門家の試算がある。第5波をいかにして抑え込むか、科学的根拠に基づきいま一度検討し、戦略を練るべきだ。

 政府は宣言と重点措置の解除後、大規模イベントの入場者数を定員の50%以内とし、上限は解除前の5千人から1万人とする方針も示している。これに準じて東京五輪の観客上限を決める構えだ。五輪を成功させて政権浮揚を図りたい菅義偉首相は、有観客の開催を目指している。「五輪ありき」の姿勢では状況の変化に素早く対応できるか疑問を抱かざるを得ない。

 首都圏4都県に1月8日に宣言が出されて以来、解除や再発令、重点措置などが繰り返されてきた。今回の重点措置と沖縄の宣言延長の期限は7月11日。それが最後になる保証はない。

 飲食店に対する午後8時までの営業時間短縮の要請は継続される。従来、認めていなかった酒類提供は重点措置地域で4人以内の飲食など一定の条件を満たせば午後7時まで認める。ただし知事判断で禁止もできる。

 国民の「自粛疲れ」が指摘され、経営を守るために要請に応じない事業者もある。引き続き感染防止対策の効果を上げるためには、こうした人々の協力を得る必要がある。

 病床使用率などの指標を見る限り、医療体制の逼迫(ひっぱく)は緩和しつつある。だが東京の17日の新規感染者数は452人。直近7日間平均は1日386・4人で前週比98・6%と減少ペースは鈍化している。既に人出は増加を見せ、解除後が懸念される。

 7月23日に開幕予定の五輪も感染拡大の要因になる恐れがある。国立感染症研究所などがまとめた試算によると、五輪を有観客で開催すると無観客の場合に比べて感染者が累計で1万人増える可能性がある。

 感染力が強いインド株ウイルスも気掛かりだ。インド株の影響が小さいと仮定しても、宣言解除や五輪に伴う人出の増加により、五輪期間中に再宣言が必要になる恐れがあるという。政府はワクチン接種を急ぐが、五輪開幕までに接種を完了する人は限定される。コロナ収束はまだ先とみられる。

 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、コロナ禍の中の五輪開催について「普通はない」と発言。専門家らは、きょうにも提言を発表する。無観客開催が最も感染リスクが小さいとの評価を盛り込む方向だ。

 政府の最大の責務は医療が逼迫する状況を招かないことだ。専門家の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。国民の生命と健康を危険にさらすことがあってはならない。

秋田の最新ニュース