社説:西馬音内盆踊り 安全開催で伝統継承を

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 羽後町の西馬音内盆踊り実行委員会は、今年の盆踊りを無観客で開催すると決めた。新型コロナウイルスの感染対策をした上で、規模と期間を縮小する。新型コロナの影響で昨年は中止していた。

 西馬音内盆踊りは例年8月16~18の3日間、本町通りで開催。午後7時半ごろ始まり、11時半ごろまで行われる。沿道には多くの観光客が詰め掛け、優美で幽玄な盆踊りを楽しむ。

 今年は8月16日のみの開催とし、時間も午後7時半~9時に短縮する。踊り手とはやし方は、町内の在住者で事前登録した人に限る。例年は400人ほどの踊り手を100人程度に絞り、間隔も十分に確保するという。盆踊りの様子は町がインターネットでライブ中継する。

 感染防止のため、秋田市の秋田竿燈まつりをはじめとする祭りの中止が県内で相次ぐ中、実行委が開催を決めた背景には、町の伝統行事継承への強い思いがある。

 日本三大盆踊りに数えられ、1981年に国重要無形民俗文化財に指定された西馬音内盆踊りは町民の誇りだ。保存会や愛好者グループによる子どもたちへの指導など、これまでも地道な保存・継承活動が続けられてきた。

 こうした取り組みを考慮すれば、「先人からの伝統を子や孫につないでいくために、本番を2年続けて中止するわけにはいかない」とする実行委の危機感は理解できる。さまざまな対策を講じた上で開催するという決断を尊重したい。

 とはいうものの、最優先すべきは安全の確保である。無観客とし規模を縮小するとはいえ、開催への不安を拭えない町民もいるはずだ。実行委は無観客開催を周知するとともに、参加者の感染対策を徹底しなければならない。町内や周辺地域での感染状況次第では、速やかな中止の判断も視野に入れる必要があるだろう。

 西馬音内盆踊りは伝統行事であると同時に、天候に恵まれれば3日間で10万人近くが集まる町最大の観光イベントである。飲食店や土産物店にとって、2年連続で書き入れ時に観光客が見込めないのは痛手だ。町は町内での消費拡大を目的に共通商品券の発行を予定している。こうした施策を適宜打ち出すことで、商業関係者らを支えてもらいたい。

 西馬音内盆踊りは700年以上前からの豊作祈願の踊りと、1601(慶長6)年に滅んだ西馬音内城主・小野寺氏をしのぶ亡者踊りが一体化したとされる。観光イベントとしての色彩が強まったのは平成に入ってからであり、以前は観客も少なく踊りの輪も小さかったという。

 今夏は例年通りの日程や規模とはいかないものの、昔ながらの風景が再現されることになりそうだ。踊り手、はやし方ともに豊作祈願と先祖の供養という本来の盆行事に臨んでほしい。

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