ローカルメディア列島リレー(22)蔡 奕屏
全国のローカルメディアの作り手が、ローカルならではのメディアの形や取り組みについて綴るリレーエッセイです。紙もウェブも、看板やアートプロジェクトだって「ローカルメディア」に?! 特色あるローカルメディアの担い手たちのアイデアと奮闘の記録です。
国境を越えるローカルとローカルの時代へ
「地方のデザイナーさんたちは、どうやってデザインの目を通して、地方の魅力を掘り起こして、地方を元気にしているの 」という問いから、日本のローカルへ旅立った。そこから2年かけて、日本の地方にいる「ローカルデザイナー」に取材し、台湾で『地方設計・ローカルデザイン』を2021年1月に出版した。出版から2週間、編集長から重版決定の朗報があった。
なぜこのスピードで重版ができたのか。それは台湾の読者が日本のデザイナーとローカルに強い興味を持っているからだ。2019年を台湾政府が「地方創生元年」と位置づけ、日本の「地方創生」政策を参考にしつつ、台湾バージョンを作ったことも記憶に新しい。こうした追い風もあり、日本が地方に対してどのような対策を打っているかについて、台湾は非常に関心を持っているのだ。
拙著の出版後、海外からも反響があった。マレーシアの新聞で紹介されたり、香港理工大学の教授からも講演会のお誘いをいただいたりもした。こうした動きは、日本のローカルが直面している課題とその解決策に、アジアの国々も強い関心を持ち、また同様に模索しているものだといえる。
コロナで、海外との行き来が難しくなったが、オンラインで日台の交流イベントを試しに開催した。今後、出版物以外でも、イベントや他のかたちで、国境を越えて色々試みをしていきたいと思っている。これからの時代が、地方それぞれ自分ひとりで悩むのではなく、国籍を越えたローカルとローカル、相互的な経験の交流や学びの時代なのではないかと期待している。
蔡 奕屏(ツァイ イーピン)|ローカル系文化研究者
台湾台北出身、現在千葉在住。日台伝え手、ローカル系文化研究者、台湾メディアのコラムニスト。現在、千葉大学博士後期課程在学中で、デザイン文化計画研究室に所属。著作『地方設計 ローカルデザイン』の出版後、続編を製作中。