社説:五輪の観客数決定 上限を再検討すべきだ

お気に入りに登録

 約1カ月後に迫った東京五輪の観客数上限は、会場定員の50%以内で最大1万人とすることになった。大会組織委員会や政府、国際オリンピック委員会(IOC)などによる5者協議の決定だ。ただしIOCやスポンサー企業の関係者は観客とは別枠で入場を認める方針。事実上、観客数は「上限」を超えることが予想される。

 感染症の専門家による提言は、無観客が最も望ましいとした上で、有観客の場合も上限はより厳しくすることを求めた。5者協議の結論は提言とは相反する。五輪を契機とした新型コロナウイルス感染拡大を防ぎ、国民の生命と健康を守る責任を果たすため、政府は提言を尊重し観客、入場者について再検討するべきだ。

 観客数の上限は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を来月11日に解除した後、政府が大規模イベントに求める制限。五輪もそれに従うとの決定だが、多くの大会関係者の入場を別枠で認めては、ダブルスタンダードと言わざるを得ない。

 例えば開会式はスポンサーやIOCなどの関係者だけで、現時点で1万人超に上る見込みという。人数はさらに絞り込むというが、上限を上回ることに変わりはないだろう。

 上限設定に伴い、既にチケットを購入している人が再抽選により観戦機会を失うこともある。にもかかわらず大会関係者が入場できるのは、不公平と批判されるのではないか。

 一方、競技会場で観戦を楽しむ人の数が結果的に上限を超えることになれば、「感染防止対策を緩めてもいい」との誤ったメッセージになる恐れがある。全国的な国民の移動や外出自粛にも影響を与えかねない。

 提言は、規模や社会的注目度の面で五輪は通常のスポーツイベントとは別格と指摘。開催時期は夏休みやお盆の時期でもあり、観客らの移動が集中すれば感染機会が格段に増加する可能性が高いと懸念を示す。感染拡大の予兆があれば無観客に切り替えることなども求めている。

 組織委やIOCも感染防止策を進めている。選手村に滞在する海外選手らのうち80%以上がワクチンを接種して来日する見込み。入国から14日間は関係者の行動を制限する。ただし、これらは主に大会関係者の感染防止策にとどまる。

 提言には当初、五輪開催の可否を検討するよう要望する文言があった。菅義偉首相が先進7カ国首脳会議で開催を表明したことを受け、盛り込むのを見送ったという。

 5者協議は今後、感染が拡大し緊急事態宣言が再発令された場合、無観客に切り替えることなどを想定しているという。重点措置解除に至らなかったり、宣言を再発令したりする場合でも五輪を開催する判断は妥当なのか。国民の安全を守るのは政府の責任だ。専門家の声に改めて耳を傾けるべきだ。

秋田の最新ニュース