北斗星(6月22日付)

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 100分の1秒差を競う陸上短距離の世界で風は重要な要素だ。山県亮太選手(29)が今月上旬、陸上男子100メートルで樹立した9秒95の日本新記録は追い風2・0メートル。記録が公認される上限ぎりぎりの風だった

▼屋外で行われる競技には大なり小なり風向きが影響する。サッカーやラグビーなどの球技も同じ。競技者が風の向きや強さの変化に細心の注意をして対応するのは当然だ。さて東京五輪に吹くのはどんな風か

▼観客数の上限は会場定員の50%以内で1万人―。政府と大会組織委員会などによる5者協議で決まった。新型コロナウイルスの流行「第4波」は全国的にピークを越えたかに見え、ワクチン接種は加速しつつある。これらが五輪への「追い風」という判断なのだろう

▼一方で専門家からは感染再拡大への懸念から無観客開催が望ましいとする提言が出されていた。人の流れが活発化することで「第5波」到来は避けられないと厳しい見方をする専門家もいる

▼5者協議の決定は、観客への注意と呼び掛けで感染を防げるという楽観的考えに基づくようだ。これでは専門家の提言や警告という「向かい風」を退ける根拠にならない。感染力が強いインド由来の変異株の影響が拡大すれば事態は一層深刻だ

▼菅義偉首相は「緊急事態宣言が出た場合は無観客も辞さない」と述べた。国民の命に関わる判断である。再発令のハードルは低い方がいい。兆しがあればためらわず迅速に決断する覚悟と受け止めたい。

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