社説:元法相に実刑判決 巨額資金、自民は説明を

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 一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、元法相の前衆院議員、河井克行被告(自民離党)に懲役3年の実刑判決が言い渡された。法相経験者が公選法違反の罪に問われた「前代未聞」(検察側)の極めて悪質な事件だ。実刑は当然と言わざるを得ない。

 河井被告は当初無罪を主張。途中から買収の事実をおおむね認めていた。にもかかわらず東京地裁の判決を不服として即日控訴した。理由は執行猶予付きを求めていたからだという。

 判決は、妻の案里氏を参院選で初当選させようと地元議員ら100人に計約2870万円を配ったと認定した。案里氏はうち県議4人に対する共謀で有罪が確定済み。自民を既に離党し、参院議員も辞職している。

 相手が拒否したにもかかわらず、現金受け取りを何度も迫ったり、無理やり受け取らせたりしていた。証拠隠滅もあり、「同種の選挙買収の中でも際立って重い部類に属する」と判決が指摘したのはもっともだ。

 各候補者が言葉を尽くして政策を訴え、せめぎ合うのが選挙だ。だが買収はこうした手続きを軽視してカネで票を買おうとする行為であり、民主主義の根幹である選挙の公正を大きく損なう。買収を主導した罪の重さを河井被告は自覚すべきだ。

 この事件で解明されていないのが買収資金の原資だ。河井被告は「手持ち資金」と釈明したが、選挙前には、自民党本部から新人の案里氏陣営へ資金1億5千万円が投入されていた。

 この巨額資金があったが故に、大規模買収事件へと発展したのではなかったか。そうした疑念が依然払拭(ふっしょく)できない。

 保守分裂の激戦となった広島選挙区では自民現職が落選した。現職陣営への党からの資金は案里氏陣営の10分の1。なぜ大きな開きがあったのか。現職と安倍晋三前首相との確執が背景にあったとの指摘もある。

 案里氏は当時、党による現職と自身の擁立について「総理の強いお考え」と発言。河井被告は安倍前首相や当時官房長官だった菅義偉首相の側近として知られ、安倍、菅両氏は案里氏を応援していた。案里氏当選後の河井被告の法相初入閣を「論功行賞」と見る向きもあった。

 一連の流れを振り返ると、次の疑問が生じざるを得ない。この前代未聞の買収事件は、約7年8カ月に及ぶ「安倍1強」の下で行われた強引な政治手法と関係があるのではないか。確執があったとみられる現職を相手に対抗策として巨額資金を投入したのは、この手法の延長線上にあったのではなかったか。

 巨額資金投入について菅首相は先日、「当時の総裁と幹事長で行われたのは事実だ」と言明。額も含めて投入を決めたのは誰か、使途はどうだったのか。安倍前首相と二階俊博幹事長、現在の党総裁である菅首相は国民の目の前に全ての事実を明らかにし説明を尽くすべきだ。

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