社説:イージス断念1年 政府は住民に向き合え

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 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を秋田、山口両県に配備する計画について、政府が昨年6月に断念を表明してから丸1年となった。この間、候補地だった陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)の周辺住民に対し、計画断念に関する説明は一度も行われていない。政府の対応は極めて不誠実である。

 河野太郎前防衛相は、佐竹敬久知事らに計画断念の方針を示した際、「地元の皆さまにしっかり説明したい」と約束した。しかし、周辺住民で組織する新屋勝平地区振興会によると、断念表明後は防衛省からは何の連絡もない。本当に住民に向き合う意思があるのか疑念を抱かざるを得ない。

 後任の岸信夫防衛相は今月22日の会見で、説明会について「新型コロナウイルスの感染状況も考慮して検討する」と述べ、時期は答えられないとした。県境を越えて往来し、人を集めるのが難しい状況であることは確かだが、それならそうと事情を説明し、住民に理解を求めるのが筋だろう。約束を果たさないまま、1年にわたって何の対応も示さないのは理解に苦しむ。

 配備計画の浮上から断念に至るまで、国の方針に最も振り回されたのは住民だ。防衛省には断念までの経緯について、住民に包み隠さず説明する責任がある。疑問一つ一つに丁寧に答えない限り、幕引きには至らないことを肝に銘じるべきである。

 最大の疑問は配備断念の理由である。防衛省は迎撃ミサイルを発射する際の推進装置「ブースター」を海上など安全な場所に落下させるには、大幅なシステム改修が必要と判明したことを理由に挙げている。本当にそれだけなのだろうか。

 住民が最も問題視したのは演習場と住宅地が近接していることだった。他国の攻撃リスクにさらされ、安全が脅かされるといった反対が渦巻いた。しかし、計画断念に関する説明ではその点が全く触れられていない。河野、岸両氏も「住宅地との距離をどう評価したか」との問いに正面から答えていない。

 「住宅地との近さ」が理由なのか明確にすべきだ。防衛省は過去に住宅地に近くても問題はないと明言した。近さが理由ならば過去の見解を覆すことにもなる。住民には当初から「防衛省は候補地選定で住宅地との距離を軽視していたのではないか」との疑念があった。納得いく説明を求めたい。

 防衛省の数々の対応が住民の不信感を増幅させた。演習場を適地とした報告書には事実と異なるずさんなデータを記載していたほか、住民への説明会では職員が居眠りをして反感を買った。配備計画自体も、安全性を強調しておきながら結局は不備があると撤回した。

 政府は、これまで住民に多大な混乱を引き起こしたことを重く受け止めなければならない。真摯(しんし)な姿勢で早期に住民と向き合うべきである。

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