社説:土石流から10日 盛り土の規制強化急げ

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 静岡県熱海市伊豆山の大規模土石流災害は13日で発生から10日となった。現場ではいまだ行方不明者の捜索が続いている。この間、九州から東北まで全国で大雨による被害が発生。本県でも住宅浸水や道路・農地冠水があった。自然災害から命を守るための対策は不断に講じていかなければならない。

 大規模土石流の起点付近では不適切な盛り土が行われていたことが明らかとなっている。静岡県は計約5・6万立方メートルに及ぶ土石流の大部分が崩れた盛り土と推定する。

 排水設備が見当たらないことや産業廃棄物混入、計画を大幅に超える高さの盛り土なども問題視されている。これでは単なる自然災害とは言い難い。

 国土交通省によると、今回の土石流と同じ建設残土による盛り土の崩落事故は2001~14年に全国で14件発生。把握されているのは盛り土が関係する事故の一端にすぎないとみられ、住民の命に関わる問題にしては何とも心もとない。

 本県では熱海市の土石流災害を受け、緊急点検を始め、危険箇所の把握を急ぐ方針。国交省はデジタル地図を活用し、標高の変化から全国の盛り土の位置や件数を調べるという。

 崩落事故が既に少なからず起きているにもかかわらず、行政がこれまで盛り土問題を看過してきたとすれば無責任だ。多数の犠牲者が出てから実態把握に着手するのでは遅過ぎる。

 盛り土を規制する国の主な法律に「土砂災害防止法」「宅地造成等規制法」「森林法」などがある。対象地域や面積、目的によっては安全確保に関する規制があり、工事許可や検査などが必要になる。しかし盛り土を完全に規制する仕組みがない実態があり、自治体の条例頼みというのが実情という。

 ところが条例で科せる罰則では抑止力に限界があり、無許可搬入も後を絶たない。規制の弱い自治体が悪質な業者に搬入先として狙われるケースもある。自治体から国の法規制を求める声が上がるのは当然だ。

 熱海市の崩落現場周辺には太陽光発電施設が設置されていた。全国的に施設造成地から土砂流出などの事例がある。山間部の斜面の森林を伐採し、施設を設置することが土砂災害の誘因となる可能性が指摘される。

 環境省は今回の事故を受け、太陽光をはじめとする再生可能エネルギー発電施設の促進区域から、土砂災害の恐れがある傾斜地などを除外する方針を固めた。今後増加が見込まれる再エネ発電施設の安全性にも目を光らせる必要がある。

 住宅地の上流の盛り土によって、いつ土石流が発生するか分からないのでは安心な暮らしは確保できない。実態調査の結果は土砂災害警戒区域やハザードマップに反映し、迅速な避難に生かされなくてはならない。国に対しては盛り土の一層厳しい規制が早急に求められる。

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