社説:コロナ、飲食店対策 方針撤回、政府は猛省を

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 酒類の提供停止に応じない飲食店に対し、政府は金融機関や酒類販売事業者を通じて働き掛ける方針を表明した。猛反発を招き、1週間足らずで撤回したのは当然だ。

 新型コロナウイルスの感染防止策の一環とはいえ、この方針は金融機関や販売事業者の「営業の自由」を侵害する可能性があった。コロナ禍の中、資金繰りに苦しむ飲食店にとって金融機関からの働き掛けは脅しと受け止められる。独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる恐れもあり、あるまじきことと言わざるを得ない。政府は猛省すべきだ。

 ただし4度目の緊急事態宣言が出された東京都では感染拡大に歯止めがかからない。東京五輪開幕まであと1週間。感染防止策は一刻の猶予もない。政府には効果的な対策の徹底が求められる。

 東京都は、酒類を提供する飲食店などに休業、酒類を提供しない店には午後8時までの営業時間短縮を呼び掛けている。宣言が度重なる中、要請や命令に応じずに酒類提供を続ける飲食店もある。宣言の実効性を高めるため焦りがあったのか。

 西村康稔経済再生担当相は8日、金融機関に対し取引先の飲食店に酒類提供を行わないよう働き掛けることを求めると表明。酒類を納入する事業者には、提供を続ける飲食店との取引をやめるよう要請するとした。

 新型コロナ特別措置法では、飲食店に対して休業などを要請・命令し、従わなければ過料を科すことができる。だが金融機関や販売事業者への要請については法的根拠はない。政府の方針は到底、容認されるものではなかった。

 批判の高まりを受け、金融機関への要請方針を翌日に撤回。酒類販売事業者への要請は13日になって撤回された。

 西村氏の表明の前日開かれた関係閣僚会合では、菅義偉首相や閣僚に内部文書が示されている。菅首相はその後、「具体的内容を議論していないので承知していない」と述べた。

 内閣の方針決定に関して、首相が「承知していない」とは無責任だ。事務方の説明を聞いたにもかかわらず、閣僚の誰からも疑問の声が上がらなかったことも問題だ。漫然とお墨付きを与えたとすれば、内閣が正常に機能しているのかどうかが疑われる。菅首相をはじめ政府は、改めて意を尽くして飲食店に粘り強く協力を要請すべきだ。

 休業などの要請に応じて苦境にある飲食店と、応じない飲食店の不公平感は放置できない問題だ。応じた飲食店には協力金が支払われるが、これまでは支給の遅れが目立った。政府は一部を先払いする方針を示しているが、迅速な実施が信頼回復の第一歩だろう。政府は事務作業に当たる自治体と連携して支払いを急いで飲食店の負担軽減を図り、協力を得られるように努めなければならない。

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