社説:ワクチン巡る混乱 迅速な供給を実現せよ

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 新型コロナウイルスワクチンの国からの供給が不足し、接種を実施する自治体の混乱が続いている。政府に迫られて体制を整えたにもかかわらず、政府がブレーキをかけた格好だ。

 河野太郎行政改革担当相は謝罪したが、自治体が求める量を供給できる見通しは立っていない。コロナ禍収束の鍵を握るとされるのがワクチンだ。政府は自治体の努力が無駄にならないようワクチンの迅速な供給を実現しなければならない。

 欧米では昨年中に接種が始まり、既に2回目の接種を終えた人が40~50%程度に達した国もある。日本はいまだ20%で加速が不可欠。政府が自治体の足を引っ張るのは大失態だ。

 政府は米ファイザーと1億9400万回(1人2回で9700万人)分、米モデルナと5千万回(同2500万人)分のワクチン供給契約を結んだ。

 ファイザーのワクチンは主に自治体の接種で用いられている。4~6月は計約1億回分と大量供給され、65歳以上の高齢者の接種促進につながった。だが7~9月は7千万回分に減少。10~12月の2400万回分で、ようやく供給が完了する。

 高齢者接種は菅義偉首相が目標とした7月末までに終了する見通しで、引き続き64歳以下の現役世代の接種が急がれる。しかし河野氏は自治体の希望量に応じられないとして、接種ペースの減速を求めた。

 菅首相は、モデルナ製を含め1日100万回のペースで10~11月には全ての希望者への接種を完了する目標を掲げ、自治体に体制整備を厳しく迫った。今になって減速とは、見通しの甘さを露呈したと言うしかない。

 接種の予約枠縮小や予約停止など計画見直しを迫られた自治体が相次ぐ。全国知事会が「はしごを外され混乱している」として、ワクチン不足解消や供給スケジュールの明確化を求めたのは当然だ。

 河野氏は自治体や医療機関には4千万回分の在庫があるとして、やりくりを求めた。自治体は余分な在庫は存在しないと主張。国のシステムの不備から、政府が把握する在庫量が実態と異なることも混乱拡大の一因という。政府は在庫を一元的に管理しなければならない。自治体の信頼を裏切った責任は重い。

 医療従事者や高齢者への接種は4月に始まった。政府は5月、接種ペースを上げるためモデルナ製を用いて自衛隊や自治体による大規模接種を開始。64歳以下の接種も進めようと企業・大学の職場接種を6月にスタートさせた。だが申請が想定を超え、下旬には受け付けを停止。無計画に接種を進めた結果と言わざるを得ない。

 政府が製薬会社と契約したワクチン量は、希望する全国民に接種するのに十分だ。問題は接種のスピードと言える。接種希望者に応えるために迅速な供給を可能にし、自治体との連携を強化しなければならない。

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