社説:選手村で陽性者 五輪発の感染拡大防げ

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 東京五輪開幕を目前に不安が現実となってしまった。南アフリカのサッカー男子代表チームの3人が東京・晴海の選手村滞在中に新型コロナウイルス検査で陽性となり、選手ら18人が濃厚接触者と確認された。水際対策のもろさの露呈を重く受け止め、選手村での感染拡大防止に全力を挙げなくてはならない。

 南アのサッカーチームは大会ルールを順守し、全ての選手、スタッフが渡航前2週間は隔離生活。健康を毎日チェックし、出発前96時間に実施した2度の検査では陰性だったという。到着した日本の空港での検査も陰性。にもかかわらず選手村に入った後にスタッフ1人、選手2人の陽性が明らかになった。

 空港など水際で何重もの検査や健康管理を経ても、感染を捕捉できないようでは安心できない。今後も同様のケースがあるという前提でより徹底した対策が求められる。

 羽田空港の水際対策などを先月末に視察した菅義偉首相は、選手らの入国本格化に備え「さらに徹底して対策を行うよう指示した」と述べていた。事前合宿の来日者を除く大会関連の1日以降の陽性者数は、20日夕現在で計67人。菅首相の言葉とは裏腹の結果ではないか。

 水際対策はもはや万全からは程遠い。選手村でクラスター(感染者集団)が生じたり、選手村から外に感染が広がったりする懸念も払拭(ふっしょく)できない。

 大会組織委員会は選手や関係者の行動範囲を制限して外部との接触を遮断する「バブル方式」によって感染拡大を食い止められるとする。また頻繁な検査の実施によって陽性者を速やかに隔離する方針だ。

 選手約1万人、大会関係者4万1千人の来日が見込まれる。国際オリンピック委員会(IOC)などがまとめた規則集「プレーブック」に沿った検査が適正、確実に行われるのか、行動制限がきちんと守られるのか―。あくまで選手や関係者の良識に頼るしかない。それでは安心するのは難しい。

 IOCのバッハ会長は来日後の記者会見で「厳格な態勢で対策は機能している」と述べていた。関係者のこうした言葉は楽観が過ぎるのではないか。

 東京都などで新型コロナの新規感染者数の増加傾向が止まらない。開会式の行われる4連休は夏休みが始まる時期とも重なる。開幕後は五輪ムードの高揚が人々の気の緩みを助長する懸念もある。

 陽性者の出た南アのサッカーチームの初戦は22日の日本戦(東京)。濃厚接触者も今後の検査が陰性なら試合に出場できるルールだという。競技場での感染リスクが心配だ。

 きょうから東日本大震災の被災地の福島県で全競技に先駆けソフトボールが始まる。福島は無観客だが、サッカーの行われる宮城県は有観客。五輪発の感染が拡大することがないように万全の対策が求められる。

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