北斗星(7月21日付)

お気に入りに登録

 湧き水のそばに鮮やかな緑のフキがある。その大きな葉っぱでコップを作って飲んだ。まろやかな水に青草の匂いが混じって、夏らしい味わいがある

▼久しぶりに足を運んだ仙北市田沢湖の湧き水でフキのコップを思い出した。子供の頃、大人に連れられて山に入った際、作り方を教わった。葉を袋状に曲げ、端を茎の方に引き寄せてつまむと出来上がりだ

▼懐かしい葉っぱの器に、山で喉を潤した時の沢水の冷たさ、うまさがよみがえった。こうした水は各地にある。蛇口をひねればすぐ飲み水が出る。飲食店ではただで水が提供される。当たり前と思えることも、この島国が水に恵まれているおかげだ

▼水道などの運営権を宮城県が企業グループに売却することになった。人口減や施設の老朽化が進む中、企業に任せて経費を削り、値上げを抑える考えだ。期間は来春から20年を予定。施設は県が所有し、水質を検査して「安全と安心を守る」という。この種の民営化は確かに一つの解決策なのだろう

▼ただし不安もある。「みんなのもの」であるはずの水を利益優先の私企業に委ねて大丈夫なのか。海外では民営にした結果、料金が跳ね上がったり、水質が悪くなったりして公営に戻した事例もある。「企業秘密」を盾に情報公開を渋り、設備の修繕や更新をおろそかにしないかと心配だ

▼水の恵みを子や孫に残す。その責任が今を生きる大人にはある。人間が手を掛けるからこそ、みんなの水は守られるのだから。

ライフラインの水道をどう守っていくか。困難に直面する現場を訪ねました

秋田の最新ニュース