社説:最低賃金引き上げ 地域間格差、是正が急務

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 本年度の最低賃金改定について、中央最低賃金審議会は都道府県の時給を一律28円引き上げ、全国平均で930円とする目安をまとめた。新型コロナウイルスの影響で目安を示せなかった昨年度から一転、過去最大の上げ幅となった。

 本県の最低賃金は現在、全国最低の792円。目安通りに改定されれば820円となるが、それでも全国との格差は残る。秋田地方審議会が今後、本県の上げ幅をどう判断するかが焦点となる。格差是正に向け可能な限りの引き上げが求められる。

 最低賃金は非正規を含む全ての労働者に適用される賃金の下限。目安は2016年度から4年連続で20円台の上昇となったが、20年度はコロナ禍による経済低迷で事実上据え置いた。現在の本県の最低賃金は全国平均(902円)と110円、最高額の東京都(1013円)とは221円の差がある。

 菅政権は引き上げに意欲を示し、今年の骨太方針に「早期に全国平均千円を目指す」と明記した。中央審議会は産業全体では経済回復が見られるなどとして大幅な引き上げを答申。政権の意向を反映した形だ。

 例年は都道府県を経済情勢に応じてA―Dの4ランクに分け、それぞれに目安を示すが、今回はいずれのランクも28円とした。目安通りに上がった場合、本県のように最低賃金が低い地域ほど引き上げ率は高くなる。地域間格差への配慮はうかがえるが、十分とは言えない。格差は都市部への人口流出の一因とされており、是正は急務だ。

 中央審議会の目安額について、県内の労働者団体は待遇改善につながると評価。商工団体は経営を圧迫するとして現状維持を求める。意見の隔たりは大きく、地方審議会の協議は難航する可能性もある。

 本県の改定額は8月に答申される見通し。労使の代表、有識者の3者が地域の実情を踏まえて活発に議論し、納得できる結論を見いだしてもらいたい。

 賃金の底上げは、働き手の生活改善に結び付く。同時に地域経済の活性化につながることも期待できる。

 一方、コロナ禍で厳しい経営を迫られている県内の中小企業は少なくない。特に飲食業や宿泊業などの状況は深刻だ。人件費負担が増せば、雇用維持が難しくなると懸念する声もある。国や自治体は企業支援に一層力を入れなければならない。

 賃金水準の向上は県政の重要課題でもある。佐竹敬久知事は「真正面から取り組む」と語り、中小企業の統合による規模拡大や業態転換を進め、賃金向上を目指す考えを示している。

 気掛かりなのは、こうした目標実現の具体的な道筋がまだ見えないことだ。若年世代の県外流出を防ぐため、魅力ある職場をどうつくっていくのか。県民に分かりやすく説明しながら、中小企業が安定的に賃上げできる環境づくりを進めてほしい。

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