社説:東京五輪開幕 2度目開催、何を残すか

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 1964年以来、57年ぶり2度目の東京五輪が開幕した。新型コロナウイルスの感染再拡大で、開催都市の東京では4度目の緊急事態宣言が発令中だ。史上最多の33競技、339種目が10都道県で行われるが、ほとんどの会場が無観客となり、前代未聞の五輪となる。

 昨年3月に大会の丸1年延期が決まった。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)下で選手、関係者は開催されるのかと不安を感じ、大会に出場してもいいのかと苦しんできたに違いない。だが大会が始まれば主役は選手だ。練習の成果を思う存分に発揮してほしい。

 懸念されるのは感染対策だ。選手らの行動範囲は制限され、外部との接触を遮断する「バブル方式」を採用しているが、選手村では陽性反応者が続出し、ほころびが出ている。選手村は最大1万8千人が宿泊できる大型施設だ。深刻なクラスター(感染者集団)が発生した場合は、大会の打ち切りをも想定しておかなければならない。

 当初の開催理念は「復興五輪」だった。延期が決まってからは「人類がコロナに打ち勝った証し」と意義を強調したが、福島市でのソフトボールと野球は無観客で開催。理念も意義も遠くかすんでいる。

 菅義偉首相は「安全・安心」と繰り返すが、この状況ではもはや安全とは言えず、安心もできない大会だ。「平和の祭典」を開催する意義は何なのか。開催することだけが目的になっているのではないだろうか。

 開催決定以来、五輪特需への期待は大きかった。東京都は全国で32兆円の経済波及効果が見込めると公表。開催は日本経済の起爆剤になるはずだった。だがコロナ禍で海外からの一般客の受け入れを断念。開幕2週間前には「無観客」が決まった。方針転換は大きな混乱を招き、当てにしていた経済効果も期待するのは難しくなった。

 招致段階での大会経費は7340億円。昨年12月の段階で延期に伴う追加経費が加わり、1兆6440億円に膨らんだ。道路整備などの大会関連経費を含めると、総コストは3兆円超になるとみられている。

 64年の東京五輪は戦後復興を世界に示し、高度経済成長の原動力となった。2度目の東京五輪は後世に何を残せるのか。

 さまざまなトラブルが続いた。国立競技場の建設計画、エンブレムの白紙撤回、マラソンと競歩の突然の札幌開催決定、大会組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言など挙げればきりがない。開幕直前に開閉会式の演出統括役が解任、開会式の楽曲制作担当が辞任という異常事態になった。

 政治が五輪へ関わり過ぎたのが、迷走が終わらない一因ではないだろうか。コロナ禍での開催は政治的な都合だ。祭典とは程遠い、「国民不在」の世界最大のスポーツ大会が始まったと言わざるを得ない。

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