北斗星(7月24日付)

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 左足を振り抜くと鋭いシュートが決まった。ボールがネットを揺らす。キーパーが横に跳んでも止められない強烈なゴールだ。一昨日の東京五輪サッカー男子1次リーグで日本が南アフリカを下した

▼テレビ観戦でも拳に力が入る。見事なプレーを見せてくれたのは20歳の久保建英(たけふさ)選手だ。「練習量は裏切らないと思う」。試合後の言葉から、大会に懸ける熱い気持ちが伝わってきた

▼ただ違和感も覚えた。灰色の観客席に応援する人の姿は見えない。フィールドの緑との対照が痛々しい。ホイッスルの音も妙に響き渡る。無観客は新型コロナウイルス対策の一環。パンデミック(世界的大流行)下の開催の難しさを突き付けられる思いがした

▼「平和の祭典」の五輪は元々、神にささげる古代ギリシャの祭典競技だった。4年に1度の開催に当たり、ギリシャ全土で都市国家間の休戦が求められた。選手は各地から集い、優勝者に与えられる神聖なオリーブの冠を目指して戦った

▼一時的にせよ争いをやめて神にささげる―。平和の祭典に思いをはせる時、昨日開幕した2度目の東京五輪に複雑な感情が拭えない。選手の活躍に声援を送る気持ちに偽りはない。だが首都圏で感染者が急増、人々の安全が脅かされている現実とどう折り合いを付けたらいいのか

▼商業主義に走り、政治への関わりを深める現代の祭典。その姿は簡素な冠が栄誉だった古代とは程遠い。五輪は誰のためにあるのか。あえて今、そう問いたい。

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