社説:エネ基本計画 脱炭素へ国民的合意を

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 国の新たなエネルギー基本計画の素案がまとまった。菅義偉首相が宣言した「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ」という目標の実現に向け、再生可能エネルギーの活用を大幅に拡大する意欲的な内容だ。

 菅首相の掲げる目標は国際公約でもある。脱炭素化に向けた動きが国際的に加速する中、世界第5位の大量排出国である日本は当然、その約束を果たさなければならない。

 素案は30年度の電源構成目標を示し、再生エネについて現行の22~24%を36~38%に拡大。19年度実績から倍増させる。中でも政府が期待しているのが太陽光だ。比較的短い期間で設置できるのが理由だという。

 しかし懸念材料もある。急速に導入が進められた結果、適した用地は減少。自然環境や景観を保全するため、設置を制限する自治体の条例も増えている。

 経済産業省の最新試算では太陽光の発電コストが初めて最も安くなった。それも政府が力を入れる理由だろう。だが強引に進めれば立地地域で摩擦が生じかねない。前提はあくまでも地元の十分な理解を得ることだ。

 水素やアンモニアを使った発電を新たに合計1%と見込んだ点も注目したい。燃やしても二酸化炭素(CO2)が発生しない次世代のエネルギーだ。

 ただし電源としての実用化には企業だけでは限界もある。研究段階が多く、巨額の投資が必要だからだ。政府は参考値として水素とアンモニアの合計で50年時点、10%の目安を掲げており、国の主導により技術開発を加速すべきだろう。

 現在主力の火力については現行目標の56%を41%に削減。原子力は20~22%に据え置き、「重要なベースロード電源」との位置付けを踏襲した。原発が多くの困難な課題に直面する中、原子力依存の政府の姿勢を改めて明確にしたものだ。

 東京電力福島第1原発事故の処理水処分をはじめ、最終処分の行き先が決まらない核のごみ、ずさんなテロ対策に伴う運転禁止など問題は山積する。原発への信頼が大きく揺らぐ中、原子力への依存をこのまま続けていいのか。

 福島原発事故の教訓を盛り込んだはずの原発の新規制基準も「骨抜き」になりつつある。「世界で最も厳しい水準」といわれたにもかかわらず、「原則40年」の運転期間は延長が相次ぐ。電源構成を考える際は、原発の抱えるさまざまな問題を総合的に精査することが必要だ。

 基本計画は、専門家らでつくる有識者会議の議論を踏まえて閣議決定される。国民の声はインターネットで公募される程度だ。各地で意見聴取会を開催するような積極的な姿勢は国には見られない。

 エネルギー政策が国民生活に関わる大きな問題であることを考えれば、こうした方法には疑問がある。決定に当たっては国民的な合意形成が不可欠だ。

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