社説:縄文、世界遺産登録 「地域の宝」広く発信を

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 本県など4道県の17遺跡で構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されることが決まった。本県の世界遺産は自然遺産の白神山地に続き2件目で、文化遺産は初。世界に認められた普遍的価値を後世に伝え、遺跡を保全すると同時に、観光振興に向けて広く発信を強化したい。

 世界の多くの新石器文化が農耕を基本とする中、縄文文化は新石器文化でありながら農耕に移行せず、狩猟や漁労、採集を基盤とした定住生活を1万年以上続けたとされる。複雑な精神文化を示す祭祀(さいし)を営んだ物証も存在する。

 こうした点について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出した政府の推薦書は分かりやすく説明し、ユネスコの諮問機関による5月の登録勧告につながった。縄文遺跡は全国に約9万カ所以上。諮問機関は17遺跡だけで縄文文化の全体像が分かると評価した。「地域の宝」の高い価値が認められた意義は大きい。

 17遺跡は本県の大湯環状列石(鹿角市)、伊勢堂岱遺跡(北秋田市)の2遺跡の他、北海道6、青森8、岩手1で構成。国内最古の世界文化遺産だ。これで日本の世界遺産は文化遺産20、自然遺産5の計25件となる。

 登録を目指して取り組みを始めた2007年から14年。国内の他の遺産候補と競合し、5年連続で政府の推薦を逃したこともある。それだけに関係者の喜びはひとしおだろう。

 鹿角、北秋田両市の関係施設を勧告後の6月に訪れた観光客はいずれも前年比3倍強。新型コロナウイルスの影響で人の移動が制限されている中だが、登録の効果は既に表れていると言える。遺跡の価値を分かりやすく紹介するガイドの一層の養成を急ぐ必要がある。

 北秋田市では小中学生と高校生によるジュニアボランティアガイドの活動が盛んだ。活動は遺跡を知り、古里に誇りを持つ好機でもある。地元住民の関心を高める効果も期待したい。

 鹿角市は遺跡を観光資源に活用しようと、縄文文化の体験プログラムの開発を目指している。観光客誘致には行政だけでなく、経済団体や観光業者との連携が欠かせない。登録の効果を持続させるためにも、観光客を引き付ける情報発信を絶えず行う努力が重要だ。他道県との広域連携も積極的に進めたい。

 諮問機関は勧告で17遺跡を評価する一方、「不適切な構造物」の存在を指摘し、撤去など改善を求めた。大湯の二つのストーンサークルの間を通る県道などを指しているとみられる。世界遺産としての「顕著な普遍的価値」を守るには、県道移設を視野に入れた対応が迫られる。

 縄文遺跡群は未解明の部分が多い。後世に価値を継承するには継続的な調査研究が不可欠だ。その役割を担う人材の養成、確保に向け、県と両市には十分な配慮を求めたい。