社説:扇田病院無床化案 住民の声聞き再検討を

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 大館市は市立扇田病院の入院病床を廃止し、2024年度から無床診療所とする計画を明らかにした。これに対し、病院のある比内地域などの住民らが「扇田病院を守る会」を結成。無床化に反対の声を上げている。医療という最も身近で切実な問題だけに、市はいったん立ち止まり、住民の声に真摯(しんし)に耳を傾けてもらいたい。

 扇田病院は、厚生労働省が公表した再編・統合の検証が必要な全国424の公的病院の一つ。市は昨年1月、扇田と市立総合の2病院の関係者による経営戦略会議を立ち上げ、病床の在り方などを協議してきた。

 扇田病院は施設の老朽化が進んでいるため、病棟を新築した場合の経営状況を病床規模別にシミュレーションした。病棟新築には多額の投資が必要で、いずれの場合も赤字の改善は困難と判断。病床のない診療所を新築する計画をまとめ、市議会6月定例会で説明した。

 病床は現在104床あるが、一般病床22床、療養病床42床、地域包括ケア病床40床を本年度から3年かけて段階的に廃止。市立総合に扇田枠の病床を設けるなどした上で、24年度に診療所を新築するスケジュール案を示した。市は老朽化への対応は待ったなしとするが、進め方があまりに急過ぎる。住民の疑問や反対をこのまま押し切るようなことがあってはならない。

 市は扇田病院の病床廃止の理由に将来的な人口減や、地域に必要な病床数推計と現状の乖離(かいり)を挙げる。確かに市の人口(国立社会保障・人口問題研究所推計)は20年の6万9816人から40年の5万1181人へと26・7%の大幅減が見込まれる。

 ただし医療の必要性が高い高齢層では事情が異なる。65歳以上の人口は40年に18・3%減と全体より減少率が小さい。75歳以上は20年の約1万4800人から25年、30年にはむしろ増加。40年には減少するが、それでも1万4千人台にとどまる。

 市はこれまで市立2病院の役割の明確化を図ってきた。市立総合は中核病院として急性期やがん診療などを引き受け、扇田は慢性期対応など地域に根差した医療を担っている。県内の自治体病院関係者は「高齢化が進む中では慢性期の患者が増える。病床を持ち、柔軟に対応できる病院の存在が重要」と言う。

 5年後、10年後と75歳以上の人口が増える中、扇田病院の病床をなくすことで、療養期の患者が行き場に困ることはないのか。詳しい検証が求められる。

 市は比内地域などで住民向けの説明会を開いたが、無床化に反対する声が相次いだ。その中で「温暖化対応の病棟を建設すれば国の補助に加え、光熱費を抑制できる」「ふるさと納税で運営費をまかなえないか」など前向きなアイデアが出されたことが特筆される。市はこうした提案をしっかり受け止め、住民を交えて地域医療の在り方を再検討するべきだ。

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