社説:「桜」不起訴不当 検察、忖度せず再捜査を

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 「桜を見る会」前日に安倍晋三前首相の後援会が主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、検察審査会が安倍氏不起訴について一部を「不当」と議決した。東京地検特捜部が再捜査し、改めて起訴すべきかどうかを決める。

 11人の市民から成る審査会が、再捜査を求める決定をした事実は重い。検察は徹底的に捜査し、真相を解明しなければならない。

 「桜を見る会」では一体、何が問題だったのか。例年、首相が公費で主催し、各界で功績のあった人を招待するのが会の本来の姿だ。だが前政権下では安倍氏の後援会関係者が多く含まれ、「私物化」しているとの疑惑が2019年に浮上した。

 特に問題視されたのが、地元山口県の支援者らを対象とした1人5千円の会費制夕食会だ。都内高級ホテルが会場となり安倍氏側に差額補填の疑いがあることから、公選法が禁じる「寄付行為」に当たるなどとして弁護士らが刑事告発していた。

 前政権を揺るがす問題に発展したものの、検察は安倍氏の元公設秘書を略式起訴したのみ。夕食会の4年分の収支約3千万円を報告書に記載しなかった政治資金規正法違反の罪だった。安倍氏については嫌疑不十分として不起訴とした。計約708万円の補填額も判明したが、公選法違反には問わなかった。

 審査会は議決で、メールなどの客観資料を入手して安倍氏の認識を判断すべきだと指摘。寄付(差額補填)に関する夕食会参加者の認識についても、一部の供述だけで判断するのは「不十分」と捜査不足を批判した。

 目を引くのは安倍氏自身に説明責任を果たすよう強く求めた点だ。議決は「首相だった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない」とした。

 審査会は、検察による不起訴処分をチェックするのが主な役割だ。審査員は広く国民から選ばれ、法律に詳しくなくても「自身の良識」に基づいて判断することが求められる。その点で今回の議決はまさしく、市民感覚に近いのではないか。

 そもそも検察は安倍氏を不起訴とする数日前、本人を1度任意聴取しただけだ。事務所の家宅捜索も行っていない。これでは不起訴は既定路線で、首相経験者への「忖度(そんたく)」があったのかと疑わざるを得ない。

 審査会が検察の判断を覆す例が相次いでいるのも、市民の目が厳しさを増している証しだ。元東京高検検事長らの賭けマージャン、菅原一秀前経済産業相の香典提供問題で検察はともに不起訴としたが、議決を受けて一転、略式起訴とした。

 菅原前経産相については、有権者に香典など計約80万円分を提供した公選法違反(寄付行為)の罪が認定された。金額としては、安倍氏側夕食会の補填額の約9分1にすぎない。こうした前例も踏まえ、検察は公正な処分を下すべきだ。

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