社説:コロナ入院制限 容体急変へ備えを急げ

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 政府は新型コロナウイルス感染者の急増を受け、病床が逼迫(ひっぱく)している地域の入院患者を原則重症者などに制限し、中等症以下の人は自宅療養とする方針を決めた。重症者の増加に備え病床を確保する狙いだが、肺炎などの症状がある中等症は容体が急に悪化する可能性がある。他に方策がないのか疑問が残る。

 これまで自宅療養は軽症や無症状の感染者を対象とし、中等症以上は入院が原則だった。中等症は呼吸不全を起こして酸素投与が必要な場合もあり、入院できなくなるのは医療体制の大幅な後退だ。「医療崩壊」に限りなく近い事態と言える。このような事態を招いた政府の対応遅れの責任は重大だ。

 菅義偉首相は、ワクチン接種が進んだ結果、高齢者の新規感染が減少傾向にあることなどから状況を楽観視していた。感染拡大が著しい東京都も、重症化しにくい若年世代の感染が多いことを理由に、医療逼迫を否定していた。

 にもかかわらず急に入院制限を打ち出さざるを得なかったのは、緊急事態宣言を出しても感染拡大を抑えられず、新たな病床確保も進まなかったためだろう。政府は自宅療養者の健康観察を徹底し、往診する医師を確保することなどを目指す。感染急拡大が続く中で間に合うのか。政府は専門家や自治体などと具体的な対応を協議し、自宅療養者の生命を守るための備えを急がなければならない。

 東京五輪や夏休み、お盆などが重なって人出や移動が増加することに加え、インド由来の変異株の影響で、従来にない勢いで感染が急拡大することが懸念されると専門家らは指摘していた。実際に首都圏を中心に新規感染者は過去最多の更新を繰り返している。東京、沖縄の2都県に出ていた緊急事態宣言は2日に首都圏3県と大阪府に拡大された。

 今春の感染第4波の際、大阪府では本来助かる生命を助けられないという医療崩壊が起き、重症者が入院できないまま自宅療養中に亡くなる例が相次いだ。同様の事態を避けるため、政府は入院制限に追い込まれた格好だ。

 緊急事態宣言下の6都府県では既に自宅療養者が約3万人に上っている。入院が制限されればさらに増加するのは避けられない。現在も自治体によっては、保健所などによる健康観察は人手が追い付かず、困難を来している。どのようにして体制を強化するか、政府は自治体任せにせず、具体策を提示しなければならない。

 政府は、地域の感染状況を踏まえて制限するかどうか検討することを要請している。高齢者や基礎疾患がある人でも自宅療養になる可能性がある一方、中等症でも重症化リスクが高ければ入院の対象になるとする。分かりにくい説明だ。自治体の混乱を招かないよう明確な判断基準を示すべきだ。

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