北斗星(8月6日付)

お気に入りに登録

 76年前の今日は月曜日だった。朝から晴れ上がり、真夏の太陽が照り付けていた。午前8時15分、上空で閃光(せんこう)が放たれると、すさまじい熱線と放射線、爆風が街を襲った

▼多くの人々が命を奪われ、ひどいやけどを負うなどした。広島の少年が主人公の漫画「はだしのゲン」は米軍の原爆投下直後の惨状を描く。「広島の時がとまった…」。その言葉に被爆者が後に歩んだ苦難の歳月を思った

▼読み進めるのが時々つらくなる。救われるのは主人公の明るさだ。家族思いで正義感が強く、情に厚い。「おまえはふまれてもふまれても強くなる麦になれ」。亡き父の口癖通り、たくましく生き抜く少年の物語でもある

▼作者の故中沢啓治さんは6歳で被爆した自らの体験を作品にした。「逃げ場のない穴に閉じこめられたような暗い気持ち」になる。ペンを手に凄絶(せいぜつ)な体験と向き合う胸の内を自著に記す。だが描き続けた。「戦争は人間のもっとも愚かな業」との思いからだった

▼原爆の投下直後は放射性物質やすすなどを含んだ「黒い雨」が降った。中沢さんによると「重油のような、真っ黒な重たい雨」だった。この雨を浴びながらも、国による救済を拒まれ続けた広島の人々の勝訴が最近、確定した。原告の他にも手を差し伸べられない人々がいる。一日も早い国の支援を望む

▼晩年の中沢さんは病魔と闘いつつも、原爆の証言活動に打ち込んだ。色紙に書く言葉は決まっていた。「人類にとって最高の宝は平和です」

秋田の最新ニュース