社説:旧優生保護法違憲 納得できる救済を急げ

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 旧優生保護法下で不妊手術を強いられたのは違憲だとして、兵庫県内の聴覚障害者ら5人が国に損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は旧法を違憲と判断した。請求については、手術を受けてから提訴するまでに、法的に請求可能な20年の「除斥期間」が過ぎたとして退けた。

 旧法は極めて非人道的で、個人の尊重を基本原理とする憲法に反するのは明らかであり、違憲判断は当然だ。一方、長く法改正などの責任を果たしてこなかった国に被害者への賠償を命じなかったのは納得し難い。

 原告に加わった夫妻は約60年前、事前に知らされずに手術された。旧法を巡る2018年の全国初提訴をきっかけに全日本ろうあ連盟が実施した調査を受け、初めて国の政策で手術が行われたことを知った。こうした夫妻に除斥期間を適用するのは適切ではないだろう。原告は控訴する方針を決めている。

 同じ趣旨の訴訟は全国9地裁・支部で起こされ、今回が6件目の判決となった。違憲判断は仙台、大阪、札幌の3地裁判決に続き4件目。これまで国に賠償を命じた判決はなく、除斥期間が高い壁になっている。

 ただ過去には、種痘接種で重い障害を負ったとして国家賠償を求めた訴訟で除斥期間を適用しなかった例もある。最高裁はこの際に、特段の事情がある場合にも請求権が失われるのは「著しく正義・公平の理念に反する」との判断を示した。旧法を巡っても、被害者が不法行為を受けたことを認識した時を起算点にするなど、状況に応じた判断をすべきではなかったか。

 今回の判決で注目されるのは、1996年の法改正まで長期にわたり、不妊手術に関する差別的条項を国会議員が改廃しなかったことは違法だと初めて判断した点だ。

 旧法は「不良な子孫の出生防止」を目的に48年制定。約1万6500人が強制的に手術を受けさせられたとされる。80年代には当時の厚生省内で人権侵害を認識していたにもかかわらず、法改正しなかった国の責任は重大だ。

 判決は「多数の被害者に必要かつ適切な措置が取られることを期待する」とした。国はこれを重く受け止め、被害者が納得できる救済に向け積極的に取り組まなければならない。

 2019年に議員立法で救済法が成立した。だが、国の責任を正面から認めた謝罪はなく、320万円という一時金も手術により大きく狂わされた人生の代償には程遠い。

 神戸訴訟の原告夫妻が暮らす兵庫県明石市は、全国初の被害者支援条例の制定を検討。国の一時金の対象外である配偶者にも給付する方針だ。こうした動きを全国の自治体に波及させ、国の早期対応を促したい。

 被害者は高齢化が進む。国は人権を踏みにじる政策を長く改めなかった過ちを認め被害者が納得できる対策を急ぐべきだ。

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