北斗星(8月10日付)

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 約100年前のスペイン風邪流行時、政府の対応は随分ひどかったようだ。「盗人を見てから縄を綯(な)うと云(い)うような日本人の便宜主義」が目に付いたという。泥縄の極みだったに違いない

▼「感冒の床から」と題する一文に出てくる。えぐるような鋭い批判を書いたのは歌人与謝野晶子。対策に統一と徹底が欠けているため、「国民はどんなに多くの避らるべき、禍(わざわい)を避けずに居るか知れません」と憂えた

▼新型コロナウイルス感染が急拡大、医療逼迫(ひっぱく)などの揚げ句、緊急事態宣言を出す。繰り返される政府の対応を見れば便宜主義は今も健在と言うほかない。輪を掛けて状況を悪くしているのが政治の言葉の問題だろう

▼日本の対策は国民に協力を仰ぐ自粛要請が軸だ。強制力のあるロックダウン(都市封鎖)は法律上できない。最大の責任を負う政府が言葉と政策で人々を納得させられるか。成否はその点に懸かる

▼桜を見る会前日の夕食会を巡る安倍晋三前首相の118回もの「虚偽答弁」。金融機関の力を借りて飲食店に圧力をかけ、休業させようとして猛反発を受け撤回。宣言下で祭典である東京五輪を開くという矛盾したメッセージの発信、さらには批判を浴びた末の入院制限の方針転換―。これでは政治家の発言をどう信じたらいいのか

▼「国民の善意と良識に依拠する危機管理」(新型コロナ民間臨調)である限り、政治の言葉への信頼が欠かせない。人々の心に届く言葉を語る政治家はどこにいるのか。

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