北斗星(8月13日付)

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 周囲を田んぼに囲まれた夕暮れ時の墓地。墓前では複数の家族が敷物を広げ、重箱入りの手料理を囲んでいる。子どもからお年寄りまで約20人。運動会の昼食時を思わせるようなにぎやかな光景だ。今年の県美術展覧会(県展)で写真部門の特賞に輝いた作品「墓前供養」である

▼大仙市の佐藤登さん(71)が一昨年8月13日、仙北市田沢湖小松の田中集落の墓地を撮影した。盆の墓参りの際に墓前でうたげを催す珍しい風習があると聞き、撮影に出掛けた。墓に料理を供え、先祖と食事を共にしているように見えたという

▼仙北市文化財保護室によると、市内農村部に伝わる恒例行事で墓前供養や相伴などと呼ばれる。先祖供養の意味がある

▼田中集落の女性(71)も例年、手作りの煮物や赤飯などを墓に供え、墓前で供養してきた。息子夫婦や孫、帰省した娘夫婦を含め10人近くになる時もある。一人一人が元気な姿を墓前に見せ、亡き夫ら先祖に対し「いつも見守ってくれてありがとう」と感謝を伝えている

▼しかし一昨年、昨年は墓前供養を見送った。一昨年は猛暑のため自身の体調を考慮。昨年は新型コロナウイルスの影響で娘夫婦が帰省できなかったことなどが響いた。墓前でそっと手を合わせるだけにした

▼コロナ禍で2度目の盆。いつもなら帰省するはずの家族と再会できず、寂しく思う人は少なくないに違いない。会えなくても家族の絆は変わらないと信じたい。墓参にそんな願いを込める人もいるだろう。

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