ニッセイ基礎研究所・天野さんに聞く 秋田の少子化と女性流出

有料会員向け記事
お気に入りに登録

 秋田県の少子化が止まりません。1年間に生まれた赤ちゃんの数は2019年に初めて5千人を下回り、今後さらに減り続けると予測さています。人口動態に詳しいニッセイ基礎研究所シニアリサーチャーの天野馨南子さんは、秋田が「戦後最も赤ちゃんが減った県」だとし、背景として若い女性の極端な流出を指摘します。データに基づいて話を聞きました。(斉藤賢太郎)

あまの・かなこ 1971年東京都生まれ。東大卒。少子化、東京一極集中などの人口動態が専門。内閣府の少子化対策・男女共同参画関連の委員も務める。著書に『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)など。

秋田は「戦後最も赤ちゃんが減った県」


―秋田県の少子化をどう見ていますか。

「長期にわたり若い女性、特に20代前半の女性が仕事を求めて流出し続けた結果だと思います。将来のお母さん候補がせっかく育っても、途中でごっそり抜けてしまう。お母さん候補の若い女性が減り続けているわけだから、出生数が大きく減るのは当然です。縮小ループに陥っていると言えます。この構造は秋田だけでなく東北全体にも当てはまります。他の地方と比べ東北圏は新幹線開通のみならず、非常に経済的な高速バス利用でも東京が近く、大学時代に観光・就活と何度も来京した若年人口が流出しやすいという問題を抱えています」

【データ】厚生労働省の人口動態統計によると、1950年から2019年にかけての70年間で、秋田県の出生数は89%減少した。減少率は50年の統計値がない沖縄を除く46都道府県の中で最も高い。また、50年から15年にかけての国勢調査の年代別人口を見ると、20代前半の減少率(73%)も全国最高だった。


コロナ禍の転出超過、女性は男性の1・5倍


―若者が流出する大きな原因は何でしょうか。

「地方の方とお話をすると、若者が出て行ってしまう点について『大学などの学校が大都市に集中しているからだろう』という声をよく聞きます。しかし、実際は労働市場の問題がより大きいんです。秋田県の2020年のデータを見ると、高卒の年代の15~19歳は1293人の転出超過になっています。これに対し、大卒の年代の20~24歳は1897人の転出超過です。進学のタイミングで減る若者の約1・5倍の人数が、新卒就職のタイミングで減っています」

―流出に男女差はありますか。

「女性の流出の方がより深刻です。秋田県の2020年の転出超過数では、女性が男性を1・55倍上回っています。注目してほしいのは、これが新型コロナウイルス禍で転出控えが起きた年の数字だという点です。19年までの10年間では、女性が男性の1・27倍の転出超過でした。コロナ禍でアンバランス度が高まったと言えます。秋田に限らず全国の地方でも同様の傾向が見られます。女性は男性に比べて地元就職の選択肢が少なく、コロナ禍でも首都圏行きを選ぶ人が多いということでしょう」

―アンバランスな流出が続くと、どうなりますか。

「若い男性の未婚化が進みます。未婚化は日本全体の傾向ですが、女性流出が続く地方ではそれに加え、男性がパートナーを見つけにくいという問題があります。東北の結婚相談所さんからは『出会いイベントをやっても若い女性が全く来てくれない。マッチングが成立しない』という嘆きを聞きます。地方から東京への人口流出は、地方創生が始まった2015年以降、男女のバランスがより悪くなっており、この点を強く懸念しています」

「地方創生は結果的に男性の仕事づくり中心になってしまい、魅力的な女性の職場づくり、職場の増加につながらず、新卒女性たちが居場所の拡大を一向に感じられないように見えます。その一方で、15年施行の女性活躍推進法は雇用者が301人以上の企業に女性活躍状況の『見える化』を義務付けましたので、女性が安心できる情報の発信が、より一層、東京の企業において目立っているのです」

【データ】総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、秋田県の2020年の転出超過数は2808人で、前年の3898人より28%縮小した。縮小割合を男女別に見ると、男性の31・6%に対し女性は25・4%。男女のアンバランス度は19年の1・42倍から1・55倍へ拡大した。


リモートワークで東京圏集中加速?


―コロナ禍の地方創生で、リモートワークを活用した移住促進という取り組みが出てきました。どう評価しますか。

※この記事は「有料会員向け記事」です。有料会員(新聞併読、電子版単独、ウェブコースM、ウェブコースL)への登録が必要です。
(全文 3977 文字 / 残り 2175 文字)

秋田の最新ニュース