社説:収容女性死亡問題 入管制度、抜本改革せよ

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 名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ人女性が死亡した問題を巡り、出入国在留管理庁が調査報告書を公表した。職員の意識や医療体制に問題があったと指摘し、全入管職員の意識改革を求めた。上川陽子法相が謝罪し、名古屋入管の局長らが処分された。

 しかし死因は特定されておらず遺族らが求める真相解明からは程遠い。専門家ら第三者により調査をさらに徹底すべきだ。意識改革や医療体制の拡充にとどまらず、内外から人権侵害と批判されてきた入管制度の抜本改革に取り組む必要がある。

 スリランカ人女性は2017年に「留学」の在留資格で入国。その後不法残留となり、昨年8月、名古屋入管に収容された。今年に入って吐き気を訴えるようになり、急激に痩せて介助が必要となった。3月の死亡当日は朝から血圧や脈拍が計測できないほど弱っていた。入管は土曜日で医療従事者が不在だったため対応できなかったとするが、納得できる説明ではない。

 女性が問い掛けに反応しなくなった後も、脈が止まるまで救急車を呼ばなかったという。にわかに信じられないほど生命を軽視した対応だ。全ての入管職員は、収容者の生命と健康を守る責務があることを改めて肝に銘じなければならない。

 女性が外部病院の受診などを求めた際、内規では幹部へ報告することになっているのに伝えていなかった。現場職員たちが不要と判断すれば報告しない慣例になっていた。職員たちは、一時的に収容が解かれる仮放免を得るため女性が体調不良を誇張していると疑っていた。

 死因について報告書は、複数の要因が影響した可能性があるとして「特定は困難」とした。一方、収容者支援に携わる医師は、体調が悪化した中で飲食させたことが誤嚥(ごえん)性肺炎や窒息につながった可能性を指摘。さらなる真相解明が不可欠だ。

 入管施設は「一時的な収容場所」と位置付けられ、手厚い医療は後回しにされてきた。収容中の死亡者は過去14年間で17人に上る。医療体制の充実を早急に進めなければならない。

 入管難民法の改正も避けて通れない課題だ。現行法は非正規滞在者らを原則全員、強制送還までの間収容する「全件収容主義」を採用。収容の判断は入管の裁量に委ねられ、期限はない。近年、収容の長期化、収容者数の増加が進み、国内外から批判を招いている。

 政府は入管法改正案を先の通常国会に提出。難民に認定されるべき人が本国へ送還され、生命の危険にさらされる恐れがあるなどと国連機関から指摘された。スリランカ人女性の問題も重なって野党が反発し、事実上の廃案に追い込まれた。

 入管制度は全件収容主義と決別し、収容するのは逃亡の恐れが強い場合などに限定すべきだ。裁判所による収容可否の審査義務付けも不可欠だ。

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