社説:JRトンネル整備 費用負担の議論深めよ

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 秋田新幹線の秋田、岩手県境に「新仙岩トンネル」を整備する構想で、JR東日本が初めて具体的な費用負担について考えを示した。総事業費約700億円のうち6割を負担し、残りは公費を見込む。

 秋田新幹線は本県と岩手、宮城の隣県や首都圏とをつなぐ交通の大動脈。多くのビジネス客や観光客が利用しており、トンネル整備による安全性向上と定時運行の確保は重要だ。整備を前向きに検討したい。

 事業は国の補助制度活用を前提としており、本県など地元自治体の負担が想定されている。整備の意義や公費投入の必要性についてJR、国、地元自治体の3者でまず議論を深めなければならない。

 構想では、田沢湖(仙北市)―赤渕(岩手県雫石町)駅間の約15キロにトンネルを整備する。両駅間の険しい山あいを通る現行ルートは大雨で線路の盛り土が崩れて3日間運休したことがあるほか、強風や雪の影響で遅延や運休が発生している。

 このため、トンネル整備には災害リスクを低減し、荒天時も安定的に運行させる狙いがある。運行の高速化も図られ、秋田―東京の所要時間は約7分短縮されるという。

 公費負担を求める理由についてJRは、単独での事業費負担が困難であるためとする。国の補助制度では国と地元自治体(秋田、岩手両県)が2割ずつを補助することになる。秋田、岩手の負担割合は協議で決める。

 佐竹敬久知事は早期整備が必要との立場で、県費投入は「不可能ではない」と強調。岩手県は理解を示しつつ、「鉄道事業者の責任で整備すべき」として地元負担には慎重姿勢だ。

 構想の主体はあくまでもJRであり、公費負担の必要性について国と秋田、岩手両県にしっかり説明し、協力を得るべきだろう。単独での負担が厳しい状況について納得のいく説明が不可欠だ。

 両県の沿線7市町や経済団体は「防災対策トンネル整備促進期成同盟会」(事務局大仙市)を組織し、早期整備を求めている。県はJRや同盟会と連携し、国に対して補助の必要性を強く訴えてもらいたい。

 県によると、国は整備の重要性を認めているが、予算化は実現していない。地元の重要路線であり、東北新幹線全体の信頼性向上につながることも強調し、粘り強く交渉するべきだ。

 県費投入については、県民の理解を得ることが欠かせない。整備で得られる防災効果や安定運行、時間短縮などについてしっかりと説明すべきだろう。

 公費による補助では秋田、岩手両県で自治体の負担をどう配分するかが焦点になる。県境間でスムーズな往来が実現すれば、企業活動や観光誘客などで双方にメリットがあるはずだ。お互いが得られる効果を踏まえつつ、望ましい負担について議論を重ねる必要がある。