社説:臨時国会拒否 政略よりコロナ対策を

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 4野党の臨時国会召集要求を菅政権が拒否した。新型コロナウイルス対策を議論する必要があるとして、野党が要求してから約1カ月半が経過。この間の政権の対応は事実上「黙殺」を続けてきたと言うに等しい。

 憲法53条は、衆参両院いずれかの総議員の4分1以上の要求があれば「内閣はその召集を決定しなければならない」と定める。総裁選前の9月7日から10日間の会期という野党の召集要求はこの規定に基づくにもかかわらず、なぜ拒否したのか。

 国権の最高機関である国会で堂々と討論することこそ議会制民主主義の本来の姿のはずだ。与野党で多様な議論を重ねなければ新たな対策を見いだすのも難しい。その認識が菅義偉首相には足りないのではないか。

 召集要求を巡っては、約3カ月間応じなかった2017年の安倍前内閣の対応が違憲か否かが複数の地裁で争われた。いずれも原告の損害賠償請求などは退けられたが、注目されるのは岡山地裁判決だ。内閣には「合理的期間内」の召集決定義務があり「違憲の余地がある」と明示した。菅政権の拒否も違憲の疑いが拭えないことになる。

 ただし憲法の規定にも問題がある。要求から何日以内に召集を決めなければならないとの定めがなく、数々の理由を並べて時の政権が何カ月も先延ばしにする口実にできるからだ。

 だが、それでは53条が形骸化してしまう。この規定は、少数派にも国会運営への参加の機会を保障するのが趣旨だ。同時に、多数派の横暴で国会が十分に機能を果たせなくなるのを防ぐ重要な意味がある。

 今回の野党の召集要求以降、菅首相は政権維持のための政略に傾注してきたように見える。しかし、それが裏目に出て求心力を失いつつあるようだ。

 まず五輪開催を政権浮揚策に据えたが、コロナ感染の急拡大に歯止めがかからず内閣支持率は低迷。9月中旬の衆院解散、総裁選先送りとの観測が広がると、党内の反対で打ち消しへと追い込まれたとみられる。

 それでも立て直しを図ろうと政権誕生の立役者、二階俊博幹事長の交代などの党役員人事を総裁選前に実施するという。これでは、首相続投のための「個利個略」との批判が党内から出るのもやむを得ない。

 一方でコロナの感染状況は依然厳しい。7月以降、自宅や宿泊施設で療養中に亡くなる事例が各地で続出。8月下旬には自宅療養者が12万人に迫った。全国的に「災害時の状況に近い局面が継続」というのが、厚生労働省の専門家組織の分析だ。

 この現実を見れば、ワクチン接種などにより「明かりははっきりと見え始めている」と語った菅首相の認識には無理がある。衆院解散否定の際は「最優先はコロナ対策」とした。そうであればこそ臨時国会召集を直ちに決め、与野党一致して対策最優先の政治に力を注ぐべきだ。

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